入社1ヵ月後、店長が抱いた違和感
正弘さんが働きはじめて最初の1ヵ月ほどのあいだ、その仕事ぶりは熱心そのものでした。商品の搬入や陳列を覚えるのも早く、ほかの従業員が気づかないような業務の無駄を見つけることもあります。周囲の従業員からも好意的に受け止められていたといいます。
しかし、現場に慣れるにつれて、中村店長は違和感を抱くように。
「この商品の配置は非効率ですよ。動線を考えれば、こちらに置いたほうがいい」「在庫管理の方法も見直したほうがいいでしょう。こんなやり方では余計な時間がかかりますよ」
正弘さんの助言に、最初のうちは中村さんもありがたく感じていましたが、商品の配置や在庫管理の方法には本部の方針があり、店長の判断だけでは変更できないことも少なくありません。中村店長が事情を説明しても、正弘さんは納得しませんでした。
「本部が決めたからって、なにも考えずに従っているんですか?」
次第に正弘さんの口調には苛立ちが混じるようになりました。
ある日、繁忙時間帯の人員配置について正弘さんから指摘を受けた中村店長は、翌月のシフトから検討すると伝えました。すると、正弘さんは露骨に舌打ちをしたのです。
「はぁ……。だから現場が回らないんですよ」
近くにいた従業員にも聞こえる声でした。中村店長はその場では言い返しませんでした。正弘さんは年上で管理職としての経験も豊富、指摘は正論です。しかし、店長として自分が判断しなければならないこともあり、すべての要求を受け入れるわけにはいかないのです。
その後も、正弘さんの言動は次第にエスカレート。「大企業だったらこんな管理は通用しませんよ」「店長なんだからもう少し上に掛け合う努力をしたらどうですか?」――やがて、正弘さんは親しくなったアルバイト仲間と、中村店長の失敗を笑い話にするようになります。
本来、店長である自分が従業員をまとめなければならないのに、注意すればまたなにをいわれるかわからない――。中村店長は次第に職場で孤立するようになりました。
我慢して働き続けたものの、正弘さんの入社から5ヵ月ほど経ったころ、とうとう体調を崩してしまいます。眠れない日が続き、出勤しようとすると動悸が。医療機関を受診した中村店長は、精神的な不調を理由に休職することになったのです。
