モラハラ夫と離婚したい…パート月収10万円、立ちすくむ38歳2児の母
山本美穂さん(38歳)は、夫と2人の子どもと暮らすパート勤務の女性です。夫は大企業に勤める会社員で、収入も安定しており、比較的裕福な生活をしています。
しかし、美穂さんは長年夫との関係に悩んでいました。夫はいわゆる「モラハラ夫」で、なにか気に入らないことがあったり、美穂さんに小さなミスがあったりすると、すぐ責め立ててきます。子どもたちの前でもキツい言葉を浴びせられることもしばしば。美穂さんは夫の機嫌を損ねないよう生活することに疲れ果てていました。
何度も離婚を考えましたが、なかなか決心がつきません。美穂さんのパート収入は月10万円ほど。子どもは小学6年生と3年生で、これから教育費もかかります。
「離婚して、私一人でこの子たちを育てていけるんだろうか……」
実家には兄夫婦が同居しており、子どもたちを連れて戻るのも難しい状況。自分一人で家賃を払って生活費を工面し、自立して生活していく自信が持てなかったのです。
母親には以前から相談していましたが、母親としても簡単に離婚を勧めることはできません。「もう少し様子を見たら?」と返されるたび、美穂さんは「自分が我慢するしかない」と落ち込んでいました。
そんなある日、母親は美穂さんの様子を見かねて、美穂さんの父方の祖母にあたる春江さん(仮名/86歳)に相談したのでした。
「1,000万円あげる。ただし…」祖母が出した条件
春江さんの年金は月8万円ほど、住んでいるのは築年数の古い小さなアパートです。アパートの外壁は傷み、室内の壁紙も一部が剥がれたまま。古い家具や家電を大切に使い、服も何年も同じものを着ているため、お世辞にも裕福そうな暮らしぶりには見えません。
母親から事情を聞いた春江さんは、美穂さんを自宅へ呼びました。春江さんは美穂さんが語る、夫から受けた暴言の数々を静かに聞き、こう問いかけました。
「それで? あなたはどうしたいの? これから子ども2人を自分で育てていく覚悟はあるの?」
美穂さんはすぐには答えられませんでした。「夫と別れたい、でも離婚したあとの生活を考えると不安ばかりが浮かぶ……」それでも美穂さんは、弱々しいながらも「はい」と答えます。すると春江さんは、思いがけないことを口にしたのです。
「そう。だったら1,000万円出してあげる。これだけあれば、当面の生活費にはなるでしょ?」
美穂さんは耳を疑いました。年金月8万円で、古いアパートに暮らしている祖母が、どうしてそんな大金を出せるのか不思議でした。戸惑う美穂さんに、春江さんは真剣な眼差しでこう続けました。
「ただし、条件があります。これから子どもたちをどうやって育てていくのか、ちゃんと自分で考えてみなさい。どこに住んで、どんな仕事をして、毎月いくら必要なのか。自分で計算して、それを私に説明してごらん。怖いから動けないっていってるだけじゃ、なにも変わらないよ。どうすれば暮らしていけるのか、まずは自分で考えてみるんだよ」
漠然とした不安を行動に…自立に向けた「家計の見える化」
祖母の言葉に背中を押され、その日から美穂さんは初めて離婚後の生活について具体的に考えはじめました。
住まいはどうするのか、公営住宅に入居できる可能性はあるのか、食費や光熱費、通信費、子どもたちの教育費はいくら必要なのか、夫から受け取れる養育費や、離婚時の財産分与はどうなるのか……。
家計管理のこともいままでは細かなことまでは目を向けてきませんでしたが、自治体の相談窓口で話を聞き、ママ友のFPにも相談しながら、家計の見通しを立てていきました。
離婚後すぐに十分な収入を得ることは難しいかもしれませんが、仕事を増やした場合の収入や、子どもたちの進学に必要な費用を一つずつ整理していくと、少しずつ現実的な選択肢が見えてきました。
「不安だけど、なんとかやっていけるかもしれない……」
なにもわからないまま怖がっていたときとは違い、なにを準備すればよいのかが明確になった美穂さんは、まとめた計画を手に、祖母のもとを訪れました。