妻が見つけた「美容整形2,000万円」の請求書
決算を控えたある夜、経理資料のチェックを行っていた智子さん(49歳)は、画面に並ぶ数字に強い違和感を覚えました。
「広告宣伝費、去年の3倍になってる……」
智子さんの夫・大輔さん(52歳)は、美容関連商品を扱う会社の社長です。智子も取締役として、創業当初から経理や資金繰りを担ってきました。夫が商品を売り、妻が数字を守る。会社が軌道に乗るまで、智子さんは自分の給料を後回しにしたこともあります。
事業の拡大に伴って取引先が増加すると、一定額までの宣伝費や交際費については社長決裁を認め、智子さんも数十万円単位の支出まで一件ずつ細かく精査することはなくなっていました。
しかし、今回の広告費の急増は看過できない規模です。不審に思った智子さんが詳細な明細を取り寄せたところ、大輔さんは特定の美容クリニックへの支払いを「広告撮影費」「モデル管理費」「販売促進費」といった複数の科目に分散させて処理していました。一回あたりの金額を目立たなくするためか、数十万円ずつにわけ、支払う時期もずらしてあります。
そして、請求書に記載されていた施術対象者の欄には、入社3年目の広報担当の莉奈さん(27歳)の名前が記されていました。目元、鼻、輪郭、豊胸、脂肪吸引――。過去2年分を合計すると、支払額は2,000万円を超えています。
莉奈さんは会社のSNSを担当していましたが、広告モデルとして起用された実績はありません。商品の広告にも、会社案内にも、彼女の写真は一枚も使われていませんでした。
さらに、クリニックと大輔さんが交わしたメールも残されていました。
「彼女の施術費用は弊社で負担します。請求書は会社宛てにしてください」
会社の資金を使い、一社員の個人的な美容整形費用を決済していた動かぬ証拠です。
