今回は、「無借金経営」にまつわる事例を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

6ケ月間、売上高ゼロを持ちこたえた「まるか食品」

決算書を拝見すると、必要ないのに、銀行から資金を借りて、
現預金をたくさん抱えている、というケースがあります。
で、お聞きすると概ね、次の言葉が返ってきます。
“イザというときのために・・・。”
“何かあったときのために・・・。”

 

しかし、そのようなことを言えるのは、
イザというときも、何かも、
来ていないから言える、ことなのです。

 

皆さんの記憶にも新しい、
インスタント食品のソース焼きそば虫混入事件。
いわゆる「ペヤング事件」です。
2014年の12月初旬に発生し、
直ちに出荷停止ならびに回収が行われました。
関東エリアでの販売開始は、2015年6月でした。
製造元の、まるか食品は、6ケ月間、売上高ゼロでした。
それでも、資金繰りを持ちこたえました。

 

しかもその間、
雇用は継続し、安全対策での設備投資もしています。
ちなみに、まるか食品は、無借金でした。
売上ゼロ期間中の賃金も、設備投資も、
自己資金でまかなった、とされています。

イザというときのための借入金ほど怖いものはない

つまり
イザというときのための資金を、自己資金で蓄積していたのです。
そういう経営体質だったのです。
イザというときのために借金をしておく、
という発想ではなかったのです。
ここが違うと、出費や支出の体質までも、変わります。

 

もし、まるか食品が、
大きな借金を抱えて有事に備える体質だったら、
どうだったでしょうか?
6ケ月間売上高がゼロでも、持ちこたえたでしょうか?
年商80億円の企業です。
おそらく、どこかの企業がペヤングの商品力欲しさに、
支援の手を差し伸べ、それに応えるしか道はない、
という状況に、追い込まれていたのではないでしょうか?
最近話題の、大手家電企業のようなものです。

 

イザというときのために、借入金をしておくことほど、
こわいことはないのです。
そんなことを平気で言えるのは、
現在の経営環境のもとで、
イザというときのこわさを経験していないからです。
銀行担当者は、そこを突くのがセールストークなのです。
そのような口車や、借金を薦める書籍に、
決して惑わされないよう、お願いしたいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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