今回は、銀行からの「不要な借入金」について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

来ていないから言える「イザというとき」

決算書を拝見すると、必要ないのに、銀行から資金を借りて、
現預金をたくさん抱えている、というケースがあります。
で、お聞きすると概ね、次の言葉が返ってきます。
“イザというときのために・・・。”
“何かあったときのために・・・。”

 

しかし、そのようなことを言えるのは、
イザというときも、何かも、
来ていないから言える、ことなのです。

 

東北のある企業のことです。
“ウチは、イザというときが来たんですよ。”
つまり、東日本大震災です。
取扱う商品が風評被害を受け、
震災直後の年商が、前年の50%を割りました。
“よく生き残れましたねぇ…。”と言うと、
その経営者は、開口一番、こう言われました。
“ウチは、無借金でしたから…。”
“どうしてそう言えるんですか?”
“結局、廃業していった同業者はみな、借金を抱えていたんですよ…。
元金の返済ができないし、新たに借りることも、できなかったらしいです。”

 

だから、
当時無借金であった自社だけは、生き残れた、
と、感じておられたのです。
その会社は、震災後、緊急資金として、
条件が有利な資金を、銀行から借りることができました。
“さすがにあの時だけは、ウチも借りました。
でも、すでに借金をたくさん抱えている同業他社は、
そのときに、借りれなかったんです。”

借入ありでも、回収が見込めれば貸した銀行

いかがでしょうか。
まさに、イザというときを体験された方の声です。

 

借金が多い会社に、銀行が貸さなかったのは、当然です。
現状の返済さえ滞っているのに、新たに貸すわけがないのです。
それに、イザというときほど、
元金返済が大きくのしかかる、ということです。

 

イザというときの銀行対応も、時代とともに、変わります。
経済が右肩上がりの時代と、そうでない時代とでは、
返済能力の見込みが、全く異なるのです。
取り巻く環境が良ければ、イザというときのダメージがあっても、
追加資金を注入することで、すでに貸し付けている分も含めて、
銀行は回収を見込めました。
だから、借入があっても、貸したのです。
決して、普段から借りているから、とか、
支店長とのつきあいがあるから、
ではないのです。
回収が見込めるから貸した、だけのことです。

 

イザというときは、いつ来るのかわかりません。
その備えとは、

 

不要な借入金を抱えないこと、

 

と、より多くの経営者にご理解いただきたいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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