減税終了後、住宅所有者に重い負担がのしかかる
現在、ニューヨーク市では、こうした減税措置の終了に伴う固定資産税の負担増が問題となっています。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、421-aなどの減税措置を受けてきた住宅について、今後、減免期間の終了に伴って税負担が増えることを取り上げています。同紙が紹介する住宅所有者の例では、固定資産税は2022年に140ドルだったものが、2026年は7,600ドルに増え、2027年には1万500ドルに達する見込みだといいます。物件の価格が示されていないため、税額の水準だけで負担の重さを評価することはできませんが、減免期間の終了前後で税額が大きく変わることは確かです。
同紙によると、不動産データ会社Roebling Indexの推計では、2030年までに約6万6,000戸で税負担が大幅に増加し、2031年度から2040年までの間にも約9万4,000戸で減免期間が終了すると見込まれています。
これらの住宅では、減税期間が終わることで所有者の支出が増えます。家主が負担増を賃料に転嫁しようとすれば、入居者の家賃負担にも影響が及ぶ可能性があります。一方、家賃を十分に引き上げられなければ、家主の収益が圧迫されます。
さらに、固定資産税の負担増が将来の収益見通しを悪化させれば、投資対象としての不動産の評価にも影響する可能性があります。減税措置によって住宅建設を促進した政策が、減免期間の終了後には、住宅所有者や賃貸市場に別の問題をもたらしかねないのです。
マムダニ市長の家賃対策だけで問題は解決するのか
ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長は、家賃負担の軽減を重要な政策課題として掲げてきました。家賃規制の対象となるアパートについて値上げを凍結することや、不動産所有者の保険料負担を軽減することなどが、その政策の一部です。
しかし、こうした対策だけで、固定資産税の減免終了に伴う問題を根本的に解決できるのでしょうか。
家賃の値上げを抑えれば、入居者の負担を軽減できる可能性があります。一方で、固定資産税が増加するなかで賃料収入を増やせなければ、家主の収益は圧迫されます。保険料の引き下げも経費の軽減にはつながりますが、固定資産税そのものが増える問題を解消するものではありません。
そもそも、421-aのような制度には適用期間があり、減税がいつまでも続くわけではありません。制度の適用を受けた時点で、将来、税負担が増える可能性を認識していた所有者もいたと考えられます。一方で、売り手から代替制度ができると説明されていたという購入者の声も報じられています。それにもかかわらず、減免期間の終了が近づいてから対応を求めるのであれば、住宅所有者や政策当局は、長期的な負担の変化を十分に織り込んでいたのでしょうか。
減免期間の終了を前に、住宅所有者らが減税措置の延長を求めて署名活動などを展開し、州や市の関係者に働きかけているのも、こうした事情が背景にあります。
しかし、減税期間を延長すれば、住宅所有者の負担増を先送りできる一方、地方政府の税収にも影響します。住宅供給の促進、入居者の家賃負担、家主の収益、そして自治体の財政をどう両立させるのでしょうか。単純に減税を延長すれば済む問題ではありません。
