息子一家との旅行に年間30万円を使っていた母
74歳の千鶴子さん(仮名)は、夫を7年前に亡くし、現在は地方都市の戸建てで一人暮らしをしています。
自身の老齢年金と遺族厚生年金を合わせた受給額は月約20万円。夫が残した預貯金などを含め、現在の貯蓄は約1,500万円あります。
住宅ローンは完済しており、普段の生活に困ることはありません。
千鶴子さんが毎年楽しみにしていたのは、46歳の長男・裕介さん(仮名)一家との旅行でした。
裕介さんは妻と中学生の長女、小学生の長男の4人暮らし。千鶴子さんの自宅から車で1時間ほどの場所に住んでいます。
夫が元気だったころは、夏になると家族全員で温泉地などに出かけていました。
夫の死後もその習慣は続き、旅行の計画を立てるのが千鶴子さんの楽しみになっていたそうです。
「孫たちが小さいころは、旅行の何日も前から電話をくれたんです。『おばあちゃん、あと何回寝たら旅行?』って」
旅行代の大半は千鶴子さんが負担していました。
宿泊費や夕食代などを合わせると、1回の旅行で約25万〜30万円。息子一家は現地までの交通費や一部の食事代を出していましたが、宿泊施設の予約と支払いは千鶴子さんの役割でした。
「最初は私から誘ったんです。孫たちにもいい思い出を作ってほしかったので」
裕介さんも当初は遠慮していたものの、千鶴子さんが「年に一度くらいは出させて」と言い、いつしか恒例になりました。
ところが昨年の夏、千鶴子さんは旅行を終えた後に通帳を見て、少し不安を覚えました。
5年前には約1,900万円あった貯蓄が、1,500万円ほどになっていたのです。
生活費は年金の範囲内におおむね収まっていましたが、旅行代のほか、給湯器の交換や自宅の修繕費など、まとまった支出が続いていました。
「まだ1,500万円あると思う反面、これから先も家の修理は必要だろうし、何があるか分かりません」
特に気になったのは、旅行費用です。
ここ5年間で負担した金額を計算すると、合計で約140万円になっていました。孫たちも成長し、宿泊費は以前より高くなっています。
今年の春、裕介さんから「夏はどこに行く?」と聞かれたとき、千鶴子さんは初めてこう答えました。
「今年からは、もう旅行代は出せないよ。みんなで行くなら、それぞれで払うことにしない?」
裕介さんは少し驚いた様子でしたが、「分かった。家族で相談してみる」と答えたそうです。しかしその後、旅行の話が進むことはありませんでした。
