「退職金があるから大丈夫」で終わらせず、夫婦で初めて計算
その日の話し合いは、険悪な雰囲気のまま終わりました。
翌日、正志さんは「昨日は言い方が悪かった」と謝り、週末に2人で家計を確認することにしました。通帳や住宅ローンの返済予定表、保険関係の書類をテーブルに並べます。
正志さんが60歳になるころには住宅ローンの残高はさらに減っている見込みです。会社には退職金制度もあり、60歳以降も継続して働く選択肢があります。
厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者について、大学・大学院卒の管理・事務・技術職の平均退職給付額は1,896万円、高校卒の管理・事務・技術職では1,682万円。
正志さんも会社から示された見込み額を確認すると、「退職金が入れば何とかなる」と考えていたほど余裕があるわけではないことに気づきました。
さらに夫婦が話したのは、これから何にお金を使いたいかです。裕美さんは「老後のために全部残したいわけじゃない。元気なうちに旅行にも行きたい」と話しました。
そこで、毎月の生活費、住宅ローン、保険料などを整理し、定年までにどの程度上積みできるかを計算。使っていない保険や通信契約も見直しました。
総務省の同調査によると、二人以上の世帯全体の貯蓄現在高は平均2,059万円ですが、貯蓄保有世帯の中央値は1,264万円。平均を下回る世帯は66.1%に上ります。 貯蓄額は世帯による差が大きく、「平均より多いか少ないか」だけで将来の生活を判断することはできません。
定年が近づけば、現役時代とは収入の形が変わります。その時点で初めて残高を見るのではなく、貯蓄、負債、退職金の見込み、今後の働き方を夫婦で共有しておくことが重要です。長年家計を任せてきた側も、管理してきた側も、数字を一緒に確認することで、定年後に必要な準備が具体的に見えてくるでしょう。
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