「向こうのご両親も出してくれるみたい」結婚報告に続いた話
「結婚することになった」
ひとり息子の大輔さん(40歳・仮名)からそう告げられたとき、母親の美智子さん(70歳・仮名)は思わず「本当に?」と聞き返したといいます。
美智子さんは72歳の夫・隆さん(仮名)と2人暮らし。夫婦の年金は月約25万円で、貯蓄は約3,200万円あります。
大輔さんは大学卒業後に就職し、30代半ばから一人暮らし。結婚について両親から聞くことはほとんどありませんでした。
「もう40歳だし、本人が一人でいいならそれでいいと思っていました。だから結婚すると聞いたときは、もちろんうれしかったんです」
相手は37歳の会社員。すでに2人で暮らす準備を進めており、数ヵ月後に婚姻届を出す予定だといいます。
その日の夕食は久しぶりに家族3人で囲みました。ところが、話が新居に移ったころ、美智子さんは少し引っかかるものを感じます。
2人は結婚を機にマンションを購入する予定で、すでにいくつか物件を見ているとのこと。
大輔さんは「向こうのご両親が、住宅資金を500万円くらい援助してくれるみたい」と話したあと、こう続けました。
「うちも、無理じゃなければ同じくらいお願いできないかな」
隆さんはすぐには返事をしませんでした。美智子さんも、「ちょっとお父さんと相談するね」と答えるのが精いっぱいだったそうです。
500万円を出しても、夫婦の手元には2,700万円が残ります。それだけを見れば、到底払えない金額ではありません。
しかし、貯蓄額だけを見て「問題なく出せる」とは考えられませんでした。築30年近い自宅では、今後も設備の交換や修繕が考えられます。70代に入った2人にとって、医療や介護にいくら必要になるかも分かりません。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、60歳以上の現在の生活費は月平均20.6万円だったのに対し、「無理なく生活するために必要」と考える生活費は平均24.8万円でした。さらに65歳以上で子や孫の生活費を負担している人は23.5%に上ります。
「貯金がないわけではないから、いくらか出してあげたい。でも、この先20年あるかもしれないと思うと、急に怖くなったんです」
息子の結婚を祝う気持ちと、自分たちの資金を守りたい気持ち。その間で、美智子さんは答えを出せずにいました。
