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「管理職」と「管理監督者」は別物
先日、「課長になった友人。出世したくない理由もわかる」という投稿がSNSで大きな話題になりました。添えられた昇進前後の給与明細では、基本給が8万円上がった一方で残業代の10万円がなくなり、手取りは月1万6,000円ほど減っていました。
労働基準法41条2号は、「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)には労働時間・休憩・休日の規定を適用しないと定めています。残業代が不要になる根拠はこの条文です。
ただし、ここでいう管理監督者は、社内で「管理職」と呼ばれる人と同じではありません。判断されるのは肩書ではなく実態で、おおむね次の4点が見られます。
●職務の内容:労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること。労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していなければ、管理監督者とは言えません。
●責任と権限:労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。 「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような場合は管理監督者とは言えません。
●勤務態様:現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること
●待遇:賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること※
※ 厚生労働省『労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために』平成20年9月
なお、管理監督者であっても深夜(午後10時〜午前5時)の割増賃金は必要です。
管理監督者であることを「否定した判例」「肯定した判例」
下記に、裁判によって「管理監督者」としての立場を否定された判例と、肯定された判例について紹介します。
管理監督者性を否定【年収1,200万円超:大手自動車メーカー】
大手自動車メーカーの課長職で、年収は1,200万円を超えていました。判決は管理監督者に該当しないとして、会社に約360万円の未払い残業代の支払いを命じています。裁判では遅刻・早退による賃金控除もなく出退勤時間の裁量がある一方、会議での発言も部長の補佐にすぎないとされ、経営への影響力は間接的で、経営者と一体といえるだけの重要な職責と権限はないと判断されました。
管理監督者性を否定【年俸1,250万円:外資系金融機関】
外資系金融機関で「ヴァイス・プレジデント」の職位にあり、年俸は1,250万円。華やかな肩書や高い年俸ではありましたが、職務の内容や裁量を加味した結果、管理監督者性は否定されました。会社側は「もし管理監督者でないにしても、残業代は年俸に含まれている」とも主張しましたが、裁判所は「残業代込みの給与にするなら、金額や時間数を明示して書き分けておく必要がある」とし、年俸のどこまでが残業代なのか区分されていないとして、この合意を無効としました。
管理監督者性を肯定【年収約720万円:製造メーカー】
年収約720万円の従業員について、代表者、工場長に次ぐ3番目となる部長職。所属部署全体を指揮監督し、発注管理や部署の従業員の労務管理を行っており、管理監督者性が認められました。
「高い年収」はいくつかの判断要素のうちの1つにすぎず、権限と裁量が伴わなければ、年収がいくら高くても残業代の支払い義務は消えません。
