インターンって職場体験でしょ? 経営者の認識不足が、自社の評判を地に落とす…企業が把握すべき「体験型インターン」「有償インターン」の境界線【社労士が解説】

インターンって職場体験でしょ? 経営者の認識不足が、自社の評判を地に落とす…企業が把握すべき「体験型インターン」「有償インターン」の境界線【社労士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

企業の経営者のなかには、いまだに大学生のインターンについて「職場体験」「給料は不要」という認識の人がいます。しかし、給料がいらない「体験型インターン」と「有償インターン」には明確な線引きがあります。これがあいまいだと、未払い給与の問題のみならず、「ブラックインターン」というパワーワードとともに学生のSNSで情報が拡散され、会社の評判を大きく損なうリスクがあるのです。本記事では、社会保険労務士の山本達矢氏が解説します。

 ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

父が溶かした退職金【上巻】・【下巻】
小林篤典(著)+ゴールドオンライン(編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

「インターンの大学生に給料払わないとダメ?」「…ええっ!?」

「社労士さん、インターンの大学生さんって給料払わないとダメ?」

 

大阪市内のIT企業を訪問した際、社長からこんな質問を受けました。聞けば、夏休みに大学3年生を2週間受け入れる予定で、「せっかくやから、実際の案件のコーディングも手伝ってもらおうと思ってる」とのこと。

 

「社長、それ、条件次第では立派な労働ですよ」

 

社長はきょとんとした顔です。

 

「え、バイトじゃないですよ。インターンって職場体験でしょ? 体験させてるんだから、むしろお金を払ってほしいくらいだよ?」

 

この認識のズレこそ、今回のテーマの核心です。

境界線を決めるのは「名称」ではなく「労働者性」

インターンシップに給与の支払い義務があるかどうか。その答えは、そのインターン生が労働基準法上の「労働者」に該当するかどうかで決まります。

 

労働基準法第9条は、労働者を「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。行政解釈(平成9年9月18日 基発第636号)※1では、インターンシップにおける実習が見学や体験的なものであり、企業側から業務に係る指揮命令を受けていない場合は労働者に該当しない。その一方、直接生産活動に従事するなど、その作業による利益・効果が企業に帰属し、企業と学生との間に使用従属関係が認められる場合は、労働者に該当するとされています。

 

つまり「インターンシップ」という看板を掲げていても、実態が「労働」なら賃金支払義務が発生する。逆にいえば、インターンシップという看板は免罪符にならないということです。

 

※1 厚生労働省「労働基準法における労働者性の関連通達」(https://www.mhlw.go.jp/content/001462702.pdf)36ページ

判断のチェックポイント

労働者性は個別事情の総合判断ですが、実務上は次の視点で整理できます。

 

[図表]判断のチェックポイント

 

右側の項目に1つでも当てはまるなら要注意。とくに「実務を任せる=事業活動への組み込み」は最大のリスクです。

 

注意したいのは、就業体験を伴うプログラムが当たり前になったことで、この境界線が年々曖昧になっている点です。いわゆる三省合意の改正※2により、現在「インターンシップ」と呼べるのは就業体験を必須とする類型に限定され、一定要件を満たせばインターンに参加した学生の情報を採用選考に活用できるようになりました。早期選考のルートになるケースもあり、「実務に近い体験をさせたい」という企業側の動機が強まるほど、労働者性のラインに近づいていく。この構造的なジレンマを、受け入れ企業は注意しておく必要があります。

 

※2 厚生労働省「令和5年度から大学生等のインターンシップの取扱いが変わります」(https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/content/contents/001265743.pdf

交通費や謝金を払ったら「労働」になる?

もうひとつ、実務でよく聞かれる質問がこれです。答えは「支払いの性質によります」。

 

交通費や昼食代など実費弁償にとどまる支給は、労働の対価(賃金)ではないため、それだけで労働者性が認められるわけではありません。無給インターンでも交通費支給は一般的で、問題ありません。

 

一方、作業の成果や従事時間に応じて「謝金」を支払うと、労働者性が認められる方向に働きます。「賃金じゃなくて謝金だから」という名目の言い換えは、名称ではなく実態で判断するという大原則の前では通用しません。払い方次第によって謝金は、労働者性を補強する材料になりえます。

労働者と認定されたら何が起きるか

労働者性が認められると、最低賃金以上の賃金支払い、労働時間管理、労災保険の適用など通常の従業員と同じく労務管理が必要になります。無給で受け入れていた期間が「労働」と認定されれば、遡っての賃金支払いに加え、最低賃金法違反のリスクも生じます。

 

逆に、労働者性のない体験型インターンでは、実習中にケガをしても労災保険は使えません。だからこそ、受け入れ企業の多くは学生を傷害保険等に加入させています。無給なら義務もリスクもゼロ、というわけではないのです。

エピソードの続き…社長が選んだ道

冒頭の社長には、2つの選択肢を挙げました。

 

1. 体験型に設計し直す

実案件から切り離した研修用課題に変更し、業務指示を排除する。この設計なら無給でも認められる可能性が高まります。

 

2. 有償インターンとして雇用する

アルバイトとして雇用契約を締結し、最低賃金以上を支払う。学生さんに実務を体験してもらえます。

 

社長が選んだのは2でした。

 

「体験型は結局ウチの社員が付きっきりになって人件費がかかるだけ。それなら時給を払ってでも実務を体験してくれたほうが、学生さんと会社、どちらにもメリットが大きい」

 

と判断してのことでした。

 

結果、そのインターン生は翌年、新卒として入社しました。2週間の給与額は5万円程度。求人広告1本分にも満たない金額で意欲の高い新卒を採用できたと考えれば、採用広報の投資としては破格の費用対効果だったはずです。

「タダ働き」と「キャリア体験」は明確に区切られている

インターンシップが採用活動の標準装備となった今、受け入れ前の制度設計がすべてです。設計を誤れば、未払賃金リスクだけでなく、学生のSNSで「無給で働かされた」と拡散されるレピュテーションリスク(風評リスク)にもなります。

 

かつては見えなかったインターンの実態が、今はスマホ1つで社会へ発信される時代です。悪意がなくても、制度設計の甘さが「ブラックインターン」というレッテルにつながりかねません。学生を「体験させる」場なのか、それとも実質的に「働いてもらう」場なのか、その線引きを曖昧にしたままでは、企業は知らぬ間にリスクを抱え続けることになります。今こそ、自社のインターン制度を点検すべきタイミングではないでしょうか。

 

 

山本 達矢
社会保険労務士法人WILL
代表社労士
特定社会保険労務士

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

 

 

【注目のセミナー情報】​​​

【資産運用】7月22日(水)オンライン開催
《2026年・富裕層のマネー戦略》
「投資信託×保険」の資産形成アプローチ

 

【アメリカ不動産投資】7月27日(土)オンライン開催
過去10年間で住宅価格が1.9倍に上昇したエリアも!
「減価償却×ドル建て資産」を活用した資産形成戦略

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧