平然と「名ばかり管理職」を置いた社長が受けた大ダメージ
先日、従業員30名ほどの製造業の社長から、こんな相談を受けました。
「昨年から中堅社員3名を課長に昇進させて役職手当を3万円つけて、残業代はなしにしています。問題ないですよね?」
詳しく聞くと、その課長には採用や人事評価の権限がなく、部長が決めていました。仕事の内容も昇進前後でほとんど変わらず、遅刻すれば給与から控除されています。さらに計算してみると、昇進前に残業代込みでもらっていた月給のほうが、昇進後より高いことが分かりました。典型的な「名ばかり管理職」です。
残念ながら、このうち1名はほどなく退職し、過去分の残業代を請求し最終的には企業側が数百万円を支払うことになりました。これを知った残り2名からも連鎖して同様の請求を受けることになり、会社は多額の残業代を支払うことになりました。
社長は「課長にしてやったのに」と肩を落としていましたが、本人からすれば「名刺に書いてある役職名が変わっただけで、シンプルに給料が下がった」だけです。これではトラブルに発展するのは必然です。
現在、残業代の請求は過去3年分までさかのぼることができるため、金額は想像以上に膨らみます。「昇進もしたし、これだけ給与を払っているからもう十分だろう。残業代は要らないだろう」という経営者の思い込みは、企業に大きなダメージをもたらします。
経営者・管理職・一般社員…立場で見え方は「こう変わる」
経営者は、「管理職には責任に見合う手当を払っている」と考えがちです。しかし、手当が残業代に見合う十分な金額であるかどうかは、裁判で厳しくチェックされます。
管理職本人は、「残業代のつく部下のほうが、自分の手取りより多い」という逆転が起こった場合、当然のように不満を抱えることになります。
そして一般社員は、「昇進すると損をする」と感じ、管理職になりたがらない職場も増えています。
「名ばかり管理職」の問題は、会社の法的リスクにとどまらず、管理職のなり手不足にも直結しているのです。
会社がとるべき「4つの対策」とは?
では、会社はどのような対策を取ればいいのでしょうか。具体的には下記の4項目があります。
①権限の棚卸し:採用・評価・シフト決定など、労務管理の権限が実際にあるかを確認する
②待遇差の検証:残業代込みの部下の年収と比べて、明確に上回っているかを試算する
③勤怠の把握:管理監督者も労働時間の状況把握は必要です。深夜割増の支払いも忘れずに
④区分の見直し:要件を満たさない役職は管理監督者から外し、役職手当+残業代支給に切り替える
「管理職だから残業代なし」という思考停止は、会社にとっても、働く本人にとってもリスクでしかありません。あなたの会社の管理職は、本当に経営者と一体の立場でしょうか? それとも、肩書だけが先に立っていないでしょうか? よく確認してみることをお勧めします。
山本 達矢
社会保険労務士法人WILL
代表社労士
特定社会保険労務士
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