「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」が示した租税回避問題
アイルランドの税制をめぐる議論でよく知られているのが、「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」と呼ばれる手法です。
この手法は、2013年に開催されたG8などでも取り上げられた、IT関連企業などによる租税回避の事例です。
アイルランド法人が、関係会社である別のアイルランド法人に知的財産の使用料などを支払う場合、通常であれば源泉徴収が問題となります。そこで、2つのアイルランド法人の間にオランダ法人を介在させることで、源泉徴収を回避し、結果としてアイルランドにおける課税も抑える仕組みが利用されました。
2つのアイルランド法人の間にオランダ法人を挟んだことから、「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」と呼ばれています。
このような仕組みは、多国籍企業による国際的な租税回避の問題を象徴する事例の一つとして、国際的にも注目されました。
英国のEU離脱で、外国企業の誘致先として存在感を高める
また、英国がEUを離脱し、英国に拠点を置いていた外国企業が移転先を探していた時期には、アイルランドは英国に近く、法人税率も低いことから、こうした外国企業の誘致に積極的に取り組みました。
アイルランドは英語圏であり、英国と地理的にも近いうえ、EU加盟国でもあります。外国企業にとっては、EU市場へのアクセスを確保しながら、比較的低い法人税率の恩恵を受けられるという点が大きな魅力となりました。
こうしてアイルランドは、かつて多くの人々が海外へ移住していた国から、外国企業や海外からの投資を呼び込む国へと大きく姿を変えていったのです。
その背景には、EU加盟という地理的・制度的な条件だけでなく、法人税率を段階的に引き下げ、外国資本を積極的に誘致してきた税制の変遷があります。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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