「弱者保護=弱者全体の利益」になるかは状況次第
筆者は、弱者保護を一律に否定するものではありません。弱者保護が弱者全体としてメリットになる場合も多いからです。
最低賃金を上げると労働者が不幸になる可能性もありますが、幸せになる可能性もあります。それは雇う会社と働く人の状況によります。最低賃金が1%上がったら雇うのを止める、という会社が10%あるならば、引き上げるべきではありません。しかし、最低賃金が10%上がったら雇うのを止める、という会社が1%あるだけならば、最低賃金を引き上げるべきでしょう。失業した1%の人には失業手当を払ってあげればよいのです。
狭い家の家賃を下げろ、という法律ができても、狭い家が急に消えるわけではありません。新しく建つ家が大きな家ばかりになりますが、今ある狭い家は壊れるまで残ります。そこで、経済政策によって貧しい人を豊かにし、狭い家が壊れてしまう前に法律を撤廃すれば、新しく狭い家が建つでしょうから、困る人はいないでしょう。
女性の重労働や深夜労働を禁止したときに、企業が「重労働や深夜労働は男性に、昼間の軽労働は女性に頼もう」と決めてくれれば、特に女性が困ることもないでしょう。稼ぎたい女性、出世したい女性は昼間に思い切り軽労働をやればよいのですから。
「行き過ぎた弱者保護」は皆を不幸にするかも…
失業者は可哀想ですが、失業手当を払いすぎてはいけません。失業手当があまり多いと、仕事をせずに失業手当で暮らす人が増えます。そうなると、世の中の働き手が減って経済活動が妨げられてしまうでしょう。
多額の失業手当を受け取っている人も、仕事のスキルを磨ける機会がないので、将来失業手当が引き下げられたときに就職しにくくなっているかもしれません。
高額な薬の健康保険適用も、行き過ぎてはいけません。たとえば「末期癌患者を1日延命する画期的な新薬」が1億円だとします。「貧しい末期癌患者が可哀想だから」と健康保険適用するとします。1万人の患者を100日延命させるために、日本人の大人1人あたり100万円の税金が必要になります。それでは日本経済が持たず、皆が不幸になってしまうかもしれません。
最低賃金を上げすぎるのも問題です。高い賃金が払えずに倒産する企業が増えれば経済活動に支障が出ますし、そうでなくても高い賃金を企業が売値に転嫁すればインフレになり、貧しい人が困ってしまうかもしれないからです。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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