「今月だけ貸してくれない?」少しずつ増える息子への頼み事
「これ以上は関われません」
息子から届いたメッセージを見て、美智子さん(仮名・73歳)はしばらく画面を閉じることができませんでした。
夫の正夫さん(仮名・75歳)との2人暮らし。夫婦の年金収入は合わせて月約17万円です。
当時住んでいたのは、郊外にある民間の2DK。家賃と管理費を合わせて月約7万円かかっていました。
正夫さんが70歳まで働いていたころは、年金以外にも月数万円の収入があり、家計はどうにか回っていたといいます。
しかし、仕事を辞めると状況が変わりました。
「最初は、貯金から少しずつ出せばいいと思っていたんです」
退職時に500万円ほどあった預貯金は、家電の買い替えや冠婚葬祭などが重なるなかで減少。食料品や光熱費の値上がりもあり、毎月の収支に余裕がなくなっていきました。
そこで頼るようになったのが、一人息子の健太さん(仮名・47歳)です。最初は「今月だけ3万円貸してくれない?」というものでした。
数ヵ月後には、冷蔵庫の買い替えで10万円。その後も、まとまった出費があるたびに連絡するようになります。
健太さんは妻と高校生、大学生の子どもとの4人暮らし。住宅ローンも残っていました。それでも当初は、「困ってるなら仕方ないよ」と振り込んでくれたそうです。
美智子さん自身も、それを当然だとは思っていませんでした。ただ、一度助けてもらうと、次に困ったときも「少しくらいなら」と考えるようになっていました。
ある月、家賃の更新費用などが重なり、正夫さんが再び健太さんへ連絡しました。返ってきたのが、冒頭のメッセージです。
「うちにも生活があります。今までできることはしてきたつもりです。これ以上、お金のことでは関われません」
美智子さんは腹が立つより、「そこまで負担をかけていたんだ」と初めて気づいたといいます。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月平均の可処分所得が22万1,544円なのに対し、消費支出は26万3,979円でした。平均でも毎月の支出が可処分所得を上回っています。もちろん各家庭で住居費や資産状況は異なりますが、年金生活では収入だけで支出をまかなえず、資産を取り崩す世帯もあります。
美智子さん夫婦の場合、問題は毎月約7万円を占める住居費でした。
