「ここなら車がなくても大丈夫」69歳で選んだ駅近マンション
「もう一度、引っ越そうと思う」
75歳の母・和子さん(仮名)からそう告げられ、長女の由佳さん(仮名・49歳)は驚きました。
「え、また? 今のところ、気に入ってたんじゃなかった?」
和子さんは6年前、夫を亡くしたのを機に、30年以上暮らした郊外の一戸建てを売却しています。
子ども2人はすでに独立。4LDKの家に一人で暮らし続ける必要はないと考え、選んだのが駅から徒歩5分ほどの中古マンションでした。
スーパーやドラッグストアは徒歩圏内。駅前には銀行があり、内科や歯科にも歩いて行けます。
「ここなら車がなくても大丈夫。年を取ったら、こういうところのほうが楽でしょう」
当時69歳だった和子さんは、引っ越しを機に車も手放しました。実際、生活は便利になりました。
庭の草取りも、家の周りの掃除もありません。買い物は歩いて済ませられ、電車に乗れば友人との食事にも出かけられます。
内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、60歳以上が住まいや地域の環境で重視することは、「医療や介護サービスなどが受けやすいこと」が61.4%、「駅や商店街が近く、移動や買い物が便利にできること」が54.1%でした。和子さんが選んだ住まいは、こうした条件を満たしていたといえます。
それでも、70代半ばになるにつれ、気になることが出てきました。
マンションの広さは約70平方メートルの3LDK。一人暮らしには十分ですが、和子さんが日常的に使うのはリビングと寝室くらいです。
「掃除する部屋があるだけなのよね」
さらに、以前ほど電車に乗って遠くまで出かけなくなりました。
一方で増えたのは、近所で過ごす時間です。
ところがマンションでは、エレベーターで住民と顔を合わせれば挨拶をする程度。近所に知り合いはほとんどいません。
便利ではある。でも、「この先もっと年を取って、一日のほとんどをこの部屋で過ごすようになったら」と考えるようになったといいます。
そんな和子さんが興味を持ったのが、自宅から電車で数駅離れた場所にあるシニア向け分譲マンションでした。
