75歳で変わった住まいの条件
和子さんが見学したマンションは、今より少し狭い2LDKでした。駅からの距離は現在の家と大きく変わりません。それでも和子さんが目を留めたのは、別の部分でした。
共用のラウンジがあり、定期的に体操や趣味の集まりが開かれています。フロントにはスタッフがおり、緊急時に利用できる設備もありました。
もちろん、そうした設備やサービスがあれば孤立しないとは限りません。管理費なども現在より高くなるため、資金面の確認も必要です。
和子さんの年金収入は月約18万円、金融資産は約2,300万円。現在のマンションを売却した資金も住み替えに充てることができます。
そのため、由佳さんと一緒に購入費だけでなく、管理費や修繕積立金などを含めて、今後の支出を計算することにしました。
「今の家に住めないわけじゃないんだよね?」
由佳さんが尋ねると、和子さんはうなずきました。
「住めるよ。買い物にも困らないし、病院も近い。でも、便利だから十分だと思ってたの」
内閣府の同調査では、普段の主な外出目的として「近所のスーパーや商店での買い物」が80.4%、「通院」が69.9%を占めています。また、普段の交通手段では「徒歩」が50.1%で最も多く、「自分で運転する自動車」の46.6%を上回りました。年代が高くなるほど、自分で運転する自動車を利用する割合は低くなる傾向も示されています。
高齢期の住まいでは、買い物や通院、移動のしやすさは重要な条件です。しかし、それだけで住み続ける場所が決まるわけではありません。
和子さんは、すぐに現在のマンションを売却するのではなく、候補となる物件を何度か訪れました。昼間だけでなく夕方にも周辺を歩き、共用施設が実際にどの程度利用されているのかも確認しました。
「以前は、とにかく車がなくても暮らせることが一番だった。でも今は、もう少し人の気配があるところがいいなと思うの」
6年前の住み替えが間違っていたわけではありません。当時の和子さんに必要だった条件と、75歳になった現在、これからの暮らしに求める条件が変わったのです。
住まいに求めるものは、年齢や身体状況、日々の過ごし方によって変化します。一度住み替えたからといって、そこを必ず「終の住処」にする必要はありません。ただし、再度の購入には諸費用もかかり、住み替え先の管理費などが将来の家計を圧迫する可能性もあります。
「最後の引っ越しになるかは分からない。でも、今の私が暮らしたい場所を選びたい」
和子さんはそう話し、二度目の住み替えを検討しています。
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