「何も持たずに行くのも…」お小遣いをやめて遠のいた娘の家
次の週末、典子さんは娘の家へ行こうかと思いました。ところが出かける直前、ふと考えます。
「お小遣いを渡さないのに、行って何をするんだろう」
これまでは孫に会うことと、お金を渡したり何かを買ったりすることが、いつの間にかセットになっていました。
結局、その日は出かけませんでした。翌月も、「今度でいいか」と見送ります。美香さんから特に誘われなかったこともあり、気づけば2ヵ月近く娘宅へ行っていませんでした。
そんなある日、孫から電話がかかってきます。
「ばぁば、最近来ないね」
典子さんは一瞬、言葉に詰まりました。
「行ってもいいの?」
「なんで? 来ればいいじゃん」
「でも、もうお小遣いは毎回あげないよ」
すると孫は、「別にいいよ」と笑いました。典子さんは、その返事に拍子抜けしたといいます。
「孫がお金を期待していると思っていたわけじゃないんです。でも私のほうが、会いに行くなら何かしてあげないと、と思い込んでいたのかもしれません」
総務省の『家計調査』では、他の世帯への贈答品などは「交際費」に含まれます。2023年の同調査では、65歳以上の単身無職世帯の交際費は月平均1万5,990円でした。ここには孫へのお小遣いだけでなく、さまざまな交際上の支出が含まれるため単純比較はできませんが、高齢期にも人との付き合いに伴う支出があることが分かります。
その後、典子さんは再び娘宅を訪れるようになりました。ただし、5,000円のお小遣いはありません。
一緒にテレビを見たり、孫の学校の話を聞いたり、ときには近所を散歩したりします。誕生日や進学など節目には、これまで通りお祝いをするつもりです。
「何か買ってあげないと喜ばれないと、自分で勝手に思い込んでいたのかもしれません」
孫への支出は、祖父母にとって楽しみになることもあります。一方、長く続けるうちに、それが自分自身の負担になったり、会うための条件のように感じられたりすることもあります。
お小遣いを渡すことと、孫との時間を過ごすことは別のものです。無理なく続けられる金額や頻度を考えることは、自分の生活を守りながら家族との付き合いを続ける方法の一つといえるでしょう。
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