「太りすぎ」に税で警鐘…デンマークの「脂肪税」がわずか1年余りで廃止された理由【国際税務の専門家が解説】

「太りすぎ」に税で警鐘…デンマークの「脂肪税」がわずか1年余りで廃止された理由【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

健康のために、特定の食品に税をかける――。日本では食料品の消費税減税をめぐる議論が続いていますが、海外には、健康政策を目的として食品に課税した例があります。デンマークでは2011年、飽和脂肪酸を多く含む食品を対象とする「脂肪税」が導入されました。しかしわずか1年余りで廃止されることになります。なぜ、この税は定着しなかったのでしょうか。デンマークの「脂肪税」から、税制が人々の消費行動に与える影響について、9月に『食料品消費税1% 減税×給付付き税額控除の真実』を刊行したした矢内一好氏が解説します。

付加価値税25%、軽減税率なし…デンマークの消費税事情

デンマークは、EUのなかでも25%という高い付加価値税(VAT)を課しており、食料品などに対する軽減税率がないことも特徴です。

 

日本では、食料品の消費税率をどうするかがたびたび議論になります。生活に欠かせない食品について税率を低くすることで、消費者の負担を軽減するという考え方です。

 

これに対してデンマークでは、食料品についても標準税率が適用されています。

 

そのような環境のなかで、さらに特定の食品に税を上乗せすれば、対象となる食品の価格は当然、高くなります。健康のために特定の食品の消費を抑えるという政策目的があったとしても、消費者の購買行動や国内の小売業への影響まで考える必要があります。

税率4.5%のアンドラに買い物客が集まるワケ

地域は異なりますが、フランスとスペインの国境付近には、アンドラ公国という国があります。

 

隣接するフランスとスペインは、出入国を規制しないシェンゲン協定の参加国であるため、アンドラ公国への入国も比較的容易です。アンドラ公国は付加価値税率が4.5%と低いことから、近隣諸国から買い物客が多く訪れます。税率に大きな差があれば、消費者がより安く購入できる地域へ移動することは十分に考えられます。これと同じような現象が、デンマークでも生じたものと思われます。

 

税は、単に商品やサービスの価格を変えるだけではありません。価格が変われば、人々の購買場所や購買量も変化します。場合によっては、国境を越えて消費そのものが移動することもあります。健康を守るための税制であっても、導入するだけで目的が達成されるわけではありません。

 

デンマークの「脂肪税」は、税制によって人々の行動を変えようとする場合、税そのものの効果だけでなく、消費者や事業者の行動変化まで考える必要があることを示す事例といえるでしょう。

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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