形状安定性もある「優れモノの建材」のはずが・・・
前回の続きです。
理由②完成後の手離れが悪い
もっとも手離れが悪かったのは無垢積層フローリングです。これは表面が3㎜の無垢材と、その下地となる12㎜の積層材を工場で貼り合わせたものです。無垢材に近い調湿効果が期待でき、さらに無垢の1枚板と比較して、積層材による形状安定性もある優れモノのはずでした。
マンション完成当初は無垢に近い風合いと心地よい肌触りが感じられるものでした。しかし入居開始から数か月後、お客様から「フローリングが割れるのですが」という問い合わせが入りました。「とにかく見に行きます」とお答えし、すぐにお客様のお宅にお伺いしたのですが、私たちは愕然としました。「積層材の下地にしっかり接着されているはずの無垢材が剥がれて浮き、割れたりしていました。それも1、2カ所ではなく数カ所もありました。普通に歩くだけで引っかかるほどです」(小竹)
数千万円の「高い授業料」になったケースも
その場で張り替えの約束をし、さっそく施工業者やメーカーと張り替え工事の検討を開始しました。床の剥がれや浮きの原因は、表面3㎜の無垢材と下地の積層材の接着強度にばらつきがあったことによるものです。
問い合わせの件数はまだ少なかったのですが、私たちは同じ床材を使用した100世帯近くのお客様すべてにアンケート調査を実施させて頂きました。やはり、程度の差はありますが先日見たお部屋と同様の現象が数十戸のお宅で確認でき、私たちはお客様の要望を聞いて対応することにしました。
「工事は1住戸あたり約1週間。お客様には家具を移動して頂いたほか、工事の騒音などで大変な迷惑をかけました。引渡し後の数カ月で、ご購入頂いたお客様の無垢の床を次々に工具で剥がしていくのです。しかも工事期間中は仮住まいして頂いた方もいます。あの時のお客様に対する申し訳なさと、やるせなさは今でもはっきり覚えています」(小竹)
張り替え工事費、お客様の引っ越し費用、仮住まいの費用などは、一般的には施工を行ったゼネコン負担ですが、商品を指定した側にも責任があります。結果的に私たちの会社は数千万円の高い授業料を支払うことになったのです。