前回に引き続き、自然素材がマンションに使われない理由を見ていきます。今回は、「工期の長期化」を取り上げます。

自然素材の特性によって、どうしても長くなる工期

前回の続きです。

 

理由④扱いが難しく工期が長い

新建材のフローリング材は、1枚が幅100㎜なのですが、実際は3枚分がつながり、約300㎜1セットで施工できるものがよく使われます。

 

一方で無垢材は一枚幅約100㎜。新建材のように工業製品ではないので3枚セットにはできません。施工時には、調湿による伸縮を考慮した隙間を確保する手間も必要で、新建材の床張り施工と比較すると約1.3倍工期が長くなります。

 

紙クロスは施工前に、たたんで仮置きするだけで織りしわがつくデリケートな素材で、その扱いにくさから、ビニールクロスに比べて約1.5倍は工期が長くなります。

 

また、珪藻土は乾燥した素材に水を混ぜる行程があり、容器を持って現場と水道を何往復もする必要があります。さらに乾くまでの時間がそのまま工期に加算されます。その結果、ビニールクロスに比べて約2倍も工期が長くなります。

 

「自然素材の特性で長くなる工期をできる限り短縮しなければ、職人さんや現場管理者の人件費や労務管理費で工事費全体が高くなります。よって手戻りをなくすため、職人さんの技量に頼る仕上げレベルを均一にする努力をします。はじめての左官屋さんにはプレハブのモデルルームで訓練をします。その道30年のこわもての職人さんに対して『もう1回やり直してください』とダメだしするのは、かなり勇気のいることですが」(小竹)

現場での作業が増えることも工期の長期化要因

自然素材の採用は、施工現場を占有してしまう問題もあります。最近の一般的なマンションの内装は、工期短縮や施工精度向上のために、収納棚などを既製品の家具とし、工場で製作するものを採用します。その結果、コストダウンや品質の均質化が図られ、現場は取付けのみ行います。それにより施工時間は短く、常時稼動する現場をつくれています。

 

一方で、エコヴィレッジは、一つ一つの作業時間が手作業のため長く、特定の作業で現場を一定時間占有する場合が多く、はっきり言って作業効率は良くないです。

 

たとえば床張りの作業時は、無垢材が傷つかないように工事種目の異なる職人の同時作業は避けます。珪藻土や水性塗料などの湿式の建材はホコリの付着を防ぐため乾くまでは入室させません。少しでも綺麗な仕上げでお客様へお引渡しするために、ここはひたすら我慢して待つのです。その結果、現場内での作業を順番待ちする状況となり、必然的に工程管理が複雑化し、工期が長くなるのです。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか』から抜粋したものです。その後の法制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅や、中古住宅のフルリフォームでは、当たり前に使われる、無垢フローリングや、珪藻土塗りの壁などの自然素材。 しかし、新築マンションだけが調湿効果の少ない合板フローリングやビニールクロスなどの新建材で作ら…

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