前回は、自然素材を活用した住宅づくりが難しい理由について取り上げました。今回からは、 自然素材がマンションに使われない理由をより詳細に見ていきます。

コストがかかっても信頼できる建材メーカーに発注

新築マンションに自然素材が使われない理由を見ていきます。

 

理由① 自然素材は新建材に比べて値段が高い

自然素材は大量生産できる新建材に比べると、どうしても高額です。それに加え、調達や手間といった目に見えない部分にもコストがかかります。マンションの内装に使われる建材の仕様の基準はデベロッパーが決めるものの、メーカーや品番は、ゼネコンが選定してきた数種類の建材から選ぶメーカーフリー方式とし、ゼネコン推奨品をデベロッパーが承認するというのが一般的です。不具合等があっても最終責任はゼネコンにとってもらいたいデベロッパーと、調達コストを少しでも抑えたいゼネコン側の利がここで重なるためです。

 

しかし「エコヴィレッジ朝霞台」はメーカー・品番までも弊社から指定しました。自然素材は仕様基準だけでは程度の差が大きく、同じ「無垢の扉」でもメーカーによって品質が大きく異なります。そのため、メーカーまで指定しないことには安心できないのです。

 

通常は「メーカーフリー」の方が、競争原理が働くため希望するレベルの資材を安く入手できます。しかし自然素材は同じ性能のものが数多く流通しているわけではないので、やむなく「メーカー指定」となります。必然、メーカー主導の金額となりがちで価格交渉に苦労することになります。

技術レベルの高い職人の確保にも苦労

また張り手間や塗り手間といった作業手間も、新建材に比べると一手間も二手間も必要となり、時間がかかります。その作業も自然素材の施工に慣れた職人を確保しなければならず、人材確保にも苦労します。もとより、たくさんの人数で行えば、責任の所在があいまいになることに伴う品質の低下・施工精度の悪さも避けられません。職人の習熟度によって精度に違いも出るので、できるだけ少数の慣れた方に日数をかけて施工していただいているのが実情です。

 

エコヴィレッジシリーズは屋上緑化や、ワイドスパン、設置窓数の多さなど、もとより高コスト体質なのですが、さらなるコストアップとなるのです。「季節によって無垢フローリングの張り方を変えたり、熟練した職人さんを独占したりする上に、材料費や手間代で新建材を使用するより、一戸あたり100万円以上は高くなるんですから」と、建築技術部の小竹は話します。それでも採用を継続するのは、自然素材で居住者が得る快適性や安心感は、単に費用対効果では測れない価値があると考えているからです。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか』から抜粋したものです。その後の法制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅や、中古住宅のフルリフォームでは、当たり前に使われる、無垢フローリングや、珪藻土塗りの壁などの自然素材。 しかし、新築マンションだけが調湿効果の少ない合板フローリングやビニールクロスなどの新建材で作ら…

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