100本中5本の木材が使い物にならないケースも
前回の続きです。
理由③品質にばらつきが多く歩留まりが悪い
工場で大量生産する新建材と違い、自然素材の建材は、2つとして同じものがありません。同じ商品でも1㎜単位で寸法が違っていたり、調湿性能に差があったりします。代表的な事例であげるなら無垢材のフローリングでしょう。
木材内部に含まれる水分の割合を含水率といいます。木材は含水率が多いほど反りや割れなどの変形が発生します。そのため伐採後すぐに使用することはなく、天日による自然乾燥や木材用乾燥機を通した後に出荷されます。しかし、出荷時に含水率15%以下であっても、工事現場に到着した時点で同じ値とは限りません。運搬中の湿気の影響などで実際には8%から20%程度に変化する場合があります。
また、フローリングは両端で含水率が異なることもあります。ですから実際に納品されたものを確認すると、100本中5本程度は使い物になりません。大きくS字に歪んだものもあり、これはもう返品するしかありません。
職人が「使えない建材」を現場で選り分け
では、発注する際の数量はどの程度になるのか。事業企画部の樋口はこう話します。
「その発注案件では、ゼネコンが無垢材のメーカーとの取引を断ったため、弊社からの支給品となりました。弊社で床材を買い取り、それをゼネコンへ渡し、施工して頂く仕組みです。不具合のある材料が混じり、施工時には『余り材』も出るため、多めに発注しなければならなりません。どの程度多めに発注するかゼネコン勤務経験のある社員にヒアリングして決めました。しかし、実際はそれ以上はねられ、追加発注が必要でした」(樋口)
建設業界では、使えない建材を現場で選り分けることを「はねる」といいます。現場に納入されたフローリングも、その時点で変形していたり、反りや割れが生じていたりするものはもちろん、反りそう、割れそう、と近く不具合の発生が予測される建材もはねるのです。
「はねる作業は、私たちデベロッパーより、職人の方がより多く、厳しく行いがちです。お客様からのクレームで張り直しするのは職人自身だからです。葉節(はぶし)・根杢(ねもく)といわれる木の豊かな表情と見て取れる部分すら、危険回避ではねてしまいます。新建材とは比べられないほど歩留まりが悪かった。