前回に引き続き、自然素材がマンションに使われない理由を見ていきます。今回は、「素材の伸縮性」を取り上げます。

伸縮の幅は季節によって変わる!?

前回の続きです。

 

理由⑥ 湿度の変化で材料が伸縮してしまう

自然素材の扱いにくさの原因は、湿度の影響を受けて伸縮することです。無垢フローリングの場合は、1枚100㎜幅で1~2㎜程度伸縮します。この幅は季節によって変わります。無垢材を使い始めた頃の職人は「今は冬だからこれくらいだろう」と名刺を重ねて板と板の間隔を決めていました。今はだいぶ知見がたまっているので、冬は何㎜、夏は何㎜と季節ごとに施工基準を設け、差し金で測りながら施工しています。

 

壁材も苦労した部材です。和室の壁に使用する珪藻土の施工は、1度滑らかな平面に塗り上げ、乾かぬうちに曲線などの凹凸を2度塗りで仕上げをします。

 

しかし、乾燥する季節は1度目の平面塗りの固形化が早く、2度塗りのデザインがきれいに仕上がりません。混ぜる水の量を増やせばいいという問題でもなく、ここは乾く時間と塗る時間のバランスを熟知した左官職人の勘と腕に頼るしかないのです。

 

竹炭ケナフクロスは、乾燥する季節になると縮むので、クロスとクロスの隙間が目立つという指摘が少なからずありました。

 

もちろん契約前の重要事項説明で、素材の特性について解説しますが、どうしても気になる場合は隙間を目立たなくする調整を行います。

コンクリートの水分は自然素材の伸縮に影響

このように自然素材は、調湿作用がある代わりに湿度によって伸縮します。そして、この問題はマンション特有の性質によって助長されます。ご存じのようにマンションの室内は天井・床・壁の6面がコンクリートに囲まれています。

 

コンクリートは構造強度や遮音性が高く優れた建材ですが、一方で施工後に長期間に渡り水分が抜け続ける性質もあり、自然素材の伸縮に影響します。一般的には室内の湿度に影響がなくなるまで、4年から5年かかるといわれています。

 

木造の一戸建てならコンクリートを大量に使用するのは床下の基礎部分だけ、しかも基礎からフローリングなどの床材まで40㎝から50㎝の空間があります。しかし、マンションの場合、床材がコンクリートに接する部分は二重床でも十数㎝の空間しかないので、自然素材はより湿気の影響を受けるのです。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか』から抜粋したものです。その後の法制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅や、中古住宅のフルリフォームでは、当たり前に使われる、無垢フローリングや、珪藻土塗りの壁などの自然素材。 しかし、新築マンションだけが調湿効果の少ない合板フローリングやビニールクロスなどの新建材で作ら…

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