「貯める」より「使う」ことを重視する地域通貨
法定通貨と地域通貨の違いについてもう少し掘り下げてみましょう。
法定通貨は、その国で定められた中央銀行等が発行・管理するお金、一方の地域通貨は、地域の企業や団体、行政などが発行する地域独自のお金です。
通貨としての機能で比べると、法定通貨には、「価値の交換機能(支払い)、価値の尺度や基準(ものさし)としての機能、価値の保存・蓄積の機能」の三つがありますが、地域通貨は、保存・保管という機能はあえて重要視せず、地域通貨を使う人たちのなかで合意した価値の尺度に基づいて、あくまで消費活動を促すことを目的としているという違いがあります。
昔から多くの地域の経済活動を支えてきた地域通貨
このような違いを踏まえて、19世紀頃までは日本を含むあらゆる地域に地域通貨があり、その地域の経済活動を支える重要な潤滑油になっていました。国内では江戸時代には各藩が発行する藩札がありましたし、近年でも2000年代には地域通貨がちょっとしたブームとなり、各地で独自性のある地域通貨が誕生しました。
さらに歴史を遡ると、物々交換の時代から貨幣を使う時代に変わって以来、規模の大きな取引や地域を超える交易などには金銀をベースとした貨幣(金貨、銀貨)が利用されてきました。金や銀は誰にとっても価値があり、共通の価値基準となりえたため、その基準にのっとって地域間の交易が成立してきたわけです。
しかし、そのような時代の中でも、地域内の小規模な取引や、日常の生活に必要な取引(買い物)は、物々交換とその地域で合意された地域通貨が利用されていました。地域通貨は元来人々にとって身近で当たり前のものだったのです。