地域通貨は、法定通貨がカバーできない役割を補完する
地域通貨の歴史は長く、誕生した背景や目的などもそれぞれ異なります。そのため、一口に地域通貨といってもいろんなタイプがあります。
昨今よく発行されている地域振興券やプレミアム付き商品券も、使用できる地域や店舗などが限定されているという点や、半年間の有効期間が設定されている点などを考慮すると地域通貨の一つと考えてよいと思います。
タイプ分けの基準はいくつか考えられますが、重要なのは円などの法定通貨との関係です。私は、地域通貨は法定通貨がカバーできない効果や役割を補完する「補完通貨」として機能し、その特性によって全国と地方という二つの次元の経済をつなぐ仕組みになると考えています。
円と地域通貨の「交換」ができればベストだが…
例えばアメリカには「タイムダラー」という地域通貨があります。これは1980年代に誕生したもので、まさにタイム(時間)を価値基準・ものさしに置いたものです。
タイムダラーを得るためには一定の時間をかけて労働やサービスを行います。1時間誰かの家の芝刈りをすると、1タイム・ダラー獲得でき、その通貨を使って、今度は誰かに1時間家事を手伝ってもらったりできるという仕組みです。
タイムダラーを得るには労働・サービスをする必要がありますが、貯めたタイムダラーをドルに換金することはできません。国内の「エコマネー」もこのタイプです。
エコマネーもコミュニティ内の誰かに対する労働やサービスを通じて獲得するもので、貯めたエコマネーを換金したり、店などで商品やサービスを購入したりすることはできませんが、労働やサービスを提供してもらう際に対価として使うことはできます。
このようなタイプの地域通貨では、タイムダラーのように時間で決まるわけではなく、自分で決めます。「庭木の手入れを3エコマネーで担ってくれる人はいませんか」という呼びかけに対して、納得・合意した人が労働し、エコマネーを獲得する仕組みです。
このタイプの地域通貨は人と人のつながりを深めるため、狭い地域でのコミュニティの醸成する効果が期待できます。その点でタイムダラーやエコマネーは円を補完できます。
ただし、地域経済の活性化にはつながりにくいと思います。地域通貨はあくまでも法定通貨を補完するもので、実際、経済は法定通貨を主体として回っていますので、経済の活性化という効果を生み出すには、地域通貨の価値が円に裏付けられて担保されていることが大切です。
円が価値を担保するということは、簡単にいうと、ある条件のもとで円と地域通貨の交換を可能にするということです。
現在の法律では円から地域通貨の交換(地域通貨を円で購入する)は問題ありませんが、地域通貨を円に交換することは認められていません。その点で地域通貨の汎用性や利便性は下がります。
しかし、たとえ一方通行の交換でも、地域経済の活性化という目的を達成していくためには、法定通貨と交換できるという点が極めて重要だと思います。