地域コミュニティの崩壊は地方経済の衰退を招く
今回は、地域コミュニティの活性化について見ていきましょう。
地域通貨は世界では5000種、日本国内だけでも400種以上ある(あった)といわれる地域通貨のほとんどは、経済の活性化を担うものではなく、地域コミュニティの活性化を目指したものです。
同じコミュニティで働き、生活する人の結びつきを強めることを目的として、またお互いを助け合う「互酬」を支える仕組みとして地域通貨は発行され、利用されました。地域通貨について考えるにあたり、今一度この目的について考えてみることは大切なことです。
古来の日本では、農耕文化を礎とした協同作業「互酬」による「結ゆい」という自然発生的なコミュニティが形成されてきました。しかし昨今の環境はその頃と比べて激変しています。
コミュニティ内の協同作業が激減したこともあり生活協同体としてのコミュニティ意識は希薄になりました。人と人、家と家のつながりが薄れ、必然的に日本人の特質でもあった「互酬」の精神も失われつつあります。
コミュニティの崩壊は地方経済を衰退させるだけではなく、その地に住む人の精神的な孤立や疎外感をもたらしています。
地域通貨で人と人をつなぐ――地域経済が効率化
そういう時代だからこそ、人々にとってはコミュニティの再生が大切です。コミュニティに所属しているという安心感、安全な生活、精神的な豊かさなど、さまざまなレイヤーでの満足感が求められています。
このような「互酬」を、「円」で媒介させること、すなわち感謝の気持ちを「円」で表すことには抵抗を感じる方も多いと思います。「お金(円)のためにやっているわけじゃない」と。
この点地域通貨は、もらっても地域のため、人のための「いいこと」に使えるので、もらうことへの抵抗は少なくなります。
互酬は減っても一方では、どんな地域においても、日々の仕事、ボランティア活動、趣味の活動を通じて自分が住む地域を活性化しようと勤しんでいる人はいます。
問題は、その各々の一所懸命な活動が互いに連携せず、相乗効果を生んでいないことだと私は考えています。個々の活動を結びつける仕組みがあれば、それを土台として地域コミュニティの活性化に結びついていくと思うのです。
実際、協同作業は少なくなっても、地域通貨によって個々の活動を横軸で結べば、「つながり」が生まれます。その結果、地域経済が効率化するだけでなく、地域に住む人たちに精神的な安堵をもたらすことができます。それが地域通貨の理想的な姿だとも思います。