前回は、地域通貨の効果を最大化する「横軸の通った煙突モデル」について解説しました。今回は、衰退する地方経済において、「地域通貨」に期待される役割を見ていきます。

商業に限らず、多様な活動を連携して地域全体を活性化

地方経済が疲弊・衰退している現状は、程度の差はありますが、どの地域にも共通しています。都市部には関係がないかというわけでもなく首都圏でも財政難や人口が減少している自治体はあります。福祉・介護・育児サービスが不足していたり、日常の買い物に不便を感じている高齢者がいたりします。

 

課題が違えば、解決策や解決に向けたアプローチも異なります。特に大都市や大企業とのトリクルダウン機能が働かない地方は、各自治体や住民が地域のリソースに目を向け、それを最大限に活かす必要性に迫られています。それが地域の経済を自立させる方法であり、自律的に循環させる方法でもあります。政府も「まち・ひと・しごと」に焦点を当てて地方経済を支援しています。

 

地方経済の自立と自律は地産地消がベースです。ただし、地域内の需要を地元の産品やサービスで賄うことだけではありません。なぜなら、地域内の経済活動だけではなく、非経済活動を含めてさまざまな地域内の活動をつなぎ、連携させることが、地域全体の活性化に不可欠だからです。そのためには、自治体・地元インフラ企業・商工会・商店街・観光団体・NPO・スポーツ・文化団体などが、できるだけ多く、また積極的に参加することが求められます。

地域通貨は地方経済を自立・自律させるためのツール

各地域ではすでに一致団結の必要性が議論されていると思いますが「地域を一つにまとめよう」「産学官をつなごう」と、掛け声や精神的な部分での一致団結にとどまってしまい、具体的な施策やアクションに結び付いていないケースもあります。

 

想いや意識が一つにまとまったら、次に「具体的に何をするか」を考えて、目的とねらいを明確にして目標となる具体的な数字(KPI)を設定することが重要だと思います。そして、その第一歩を実際に踏み出すことが、地方経済を自立・自律させていく上で非常に大切だと思います。

 

地域通貨は、そのためのツールです。数あるツールの一つであり、「魔法の杖」ではありませんが、具体的なアクションへ踏み出す上での重要なヒントや選択肢になり、地方創生のきっかけにもなるのではないでしょうか。

本連載は、2016年9月9日刊行の書籍『地域通貨で実現する 地方創生』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

地域通貨で実現する 地方創生

地域通貨で実現する 地方創生

納村 哲二

幻冬舎メディアコンサルティング

本書は、地域活性化に興味のある人や自治体・企業・団体に向けて、地域活性化のための1つの有効な手段と思われる「地域通貨」を軸にした、事例紹介を含めた参考書・指南書です。 地域活性化は都市・地方の双方にとって喫緊の…

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