【社労士が解説】会社の「転勤命令」は拒否できるのか?
本人が希望しない転勤を拒否できるかについて、結論から言えば「会社には原則として転勤を命じる権利があるが、無制限に認められるわけではない」となります。
労働契約に勤務地の限定がなく、就業規則に転勤の規定があれば、会社は個別同意なく転勤を命じることができます(東亜ペイント事件・最高裁昭和61年判決)。しかし、その権利行使が「権利の濫用」に当たる場合は命令自体が無効となります。
判例上、以下の3つの基準で判断されます。
2.不当な動機・目的の有無
3.著しい生活上の不利益
特に近年、実務上で最も争点となるのが「労働者が被る著しい不利益」です。育児介護休業法第26条では、「事業主は、労働者の配置の変更を行おうとする場合において、その労働者の育児または介護の状況に配慮しなければならない」と定められています。
そのため、重度の介護を要する家族がいる場合や、幼い子どもをワンオペで育てざるを得ない状況などがあるにもかかわらず配慮なく転勤を強行した場合は、「権利の濫用」として転勤命令が無効と判断される可能性が高くなります。
社員から「転勤拒否」の申し出…会社が取るべき実務対応4ステップ
もし社員から転勤拒否の申し出があった場合、人事担当者や経営者は以下のステップで冷静に進めることが重要です。
ステップ1:感情的にならず、真意と理由を徹底的にヒアリング
まずは、対立姿勢をとらずに面談の場を設けます。「なぜ転勤を受け入れられないのか」について、プライベートな事情も含めて丁寧にヒアリングします。
ステップ2:雇用契約書と就業規則の再確認(リーガルチェック)
就業規則に転勤を命じる条項があるか、雇用契約書で勤務地限定の合意が成立していないかを確認します。
ステップ3:説得・対話プロセスと支援策の提示
ヒアリングした理由を踏まえ、会社として可能な支援策を提示しながら説得を試みます。
単に「命令だから行け」と迫るのではなく、「あなたの生活の負担を軽減するために、会社としてここまでのサポートを用意した」というプロセス(手続的適正)を残すことが、万一の裁判等でも重要な評価対象となります。
ステップ4:どうしても拒否が続いた場合の判断
説得を重ね、会社側に十分な業務上の必要性があり、手厚い支援策も提示したにもかかわらず、社員が正当な理由なく拒否し続ける場合、最終的には「業務命令違反」として懲戒処分(叱責、減給、出勤停止等)や普通解雇を検討することになります。ただし、転勤拒否を理由とする解雇は、裁判で無効と判断されるハードルが高いのが現実です。
