「給付付き税額控除」はどこへ向かう?「中間とりまとめ」と「閣議決定」を読み解く

「給付付き税額控除」はどこへ向かう?「中間とりまとめ」と「閣議決定」を読み解く
(※写真はイメージです/PIXTA)

2026年7月の社会保障国民会議「中間とりまとめ」と、8月5日の閣議決定によって、「給付付き税額控除」の導入に向けた道筋が示されました。一方で、消費税減税をめぐってはさまざまな意見が残されています。2つの文書を読み比べると、すでに動き始めた制度と、これから議論すべき課題が見えてきます。

食料品1%の給付は「給付付き税額控除」の予行演習か

閣議決定を経て、A路線の列車は発車しました。しかし、その先にはいくつもの信号があり、それらを青信号にして通過していく必要があります。

 

その一つが、食料品の消費税率1%への引き下げに伴って実施される「所得に連動したきめ細かな給付」です。これは、令和11年度からの実施を目指す「給付付き税額控除」の予行演習と捉えることもできます。2年間の実施を通じて、公的機関が保有する所得情報をどのように活用するのかなど、閣議決定で示された仕組みを試す期間になるとも考えられます。

 

もっとも、1%分の給付では、配偶者の所得を勘案しないなど、一定の簡便な方法が採用されています。一方、「給付付き税額控除」を本格的に導入する場合には、現行の所得税制などとの調整が必要になります。

既存の所得税制との「摩擦」をどう調整するか

例えば、利子所得についての源泉分離課税制度は、マル優制度の乱用防止などを背景として設けられています。また、株式関連の税制には、株式市場の活性化や資産形成を促す政策的な目的があります。こうした既存の税制の中に「給付付き税額控除」を組み込んでいく場合、制度同士の間で摩擦が生じる可能性があります。

 

「給付付き税額控除」は、単純に所得に応じて給付を行えば済む制度ではありません。既存の所得税制や社会保障制度との関係をどのように整理するのか、また、公的機関が保有する所得情報をどこまで活用するのかなど、制度設計には多くの検討課題があります。

 

いずれにせよ、A路線の列車はすでに発車しました。今後は、その列車がどのような運行を見せるのか、そして途中にある信号をどのように通過していくのかを、しっかり見守っていきたいと思います。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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