155円まで急落した米ドル/円、なぜ160円まで戻った?9月の焦点は「長期金利と円安」【今週の米ドル/円予想レンジ「155~163円」の根拠】

9月1日~9月7日の「FX投資戦略」ポイント

155円まで急落した米ドル/円、なぜ160円まで戻った?9月の焦点は「長期金利と円安」【今週の米ドル/円予想レンジ「155~163円」の根拠】
(※画像はイメージです/PIXTA)

8月の米ドル/円は、日米協調介入などを受けて一時155円台まで急落したものの、その後は160円まで反発しました。背景にあったのが、日本の財政規律への懸念を受けた長期金利の上昇です。9月は、この「日本の長期金利上昇=円安」という構図が続くのかが最大の焦点となります。マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が、先週の為替相場を振り返るとともに、今週の展開を予想します。

9月1日~9月7日の「FX投資戦略」ポイント

<ポイント>

・日米協調介入などを受けて米ドル/円は155円まで急落したが、その後は160円まで反発。それを主に正当化したのは、日本の財政規律への懸念を受けた長期金利上昇。
・9月はそんな「日本の長期金利上昇=円安」が続くかが最大の焦点か。一方、「さらなる円安を日本経済は許容できない」との判断による円安阻止介入方針も不変か。
・以上を踏まえ、9月の米ドル/円は155~163円で予想(第1週予想は最後をご参照ください)

8月の振り返り=米ドル/円は協調介入で155円、ただその後は160円まで戻す

円安への戻りを正当化したのは日本の長期金利上昇

8月の米ドル/円は、7月末に日本の通貨当局が米ドル売り・円買い介入を再開、さらに1998年以来の日米協調円買い介入が行われたこともあり一時155円台まで急落しました。その後の発表によると、これらの日本の介入額は15兆円に達しました。ただ介入一巡後はほぼ一本調子で160円まで米ドル高・円安に戻すところとなりました(図表1参照)。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表1]米ドル/円の週足チャート(2026年1月~) 出所:マネックストレーダーFX

 

日米協調介入などを受けた円高が、その後円安に戻すところとなった動きを正当化したのは日本の長期金利上昇でした。長期金利、10年債利回りはこの間の高値を更新、一時2.9%以上に上昇、米ドル高・円安への戻りはそれに連動したように見えました(図表2参照)。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表2]米ドル/円と日10年債利回り(2026年7月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

介入で円高に=ただ財政規律への懸念で円安に戻す

このように長期金利上昇が続いたのは、高市政権による財源が曖昧なまま消費税減税を進める動きなどについて、財政規律への懸念を受けた結果との見方が基本だったでしょう。その意味では、そんな長期金利上昇と連動した円安も、財政規律への懸念が円売り材料になった可能性があったでしょう。

 

日米協調介入などで円安から円高へ反転させながら、日本の財政規律への懸念から円安が再燃したということになります。以上からすると、さらに円安が広がるかは日本の財政規律への懸念を受けた長期金利上昇が続くかが大きな目安になりそうです。

 

米財務省が長期金利上昇阻止策=一時米ドル/円急落

8月にもう1つ注目されたこととして、米財務省が買いオペ(バイバック)の倍増を発表、事実上の長期金利上昇阻止策に動いたことがありました。この発表があった19日、米ドル/円は159円台後半から158円割れ寸前まで急落しました。

 

ただこれを、米金利低下を受けた日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小への反応と考えるのは違うかもしれません。米ドル/円と日米金利差の関係は、1年以上前から大きくかい離してきたからです(図表3参照)。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

[図表3]米ドル/円と日米10年債利回り差(2020年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

米金利上昇阻止で円高へ反転の「正しい理解」とは!?

日本の長期金利の10年債利回りは基本的に米10年債利回りに連動します(図表4参照)。そしてそんな日本の長期金利と米ドル/円は、1年以上前から「金利上昇=円安(またはその逆)」といった関係が続いてきました(図表5参照)。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表4]日米の10年債利回りの推移(2025年9月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表5]米ドル/円と日10年債利回り(2025年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

以上からすると、米長期金利阻止策に米ドル安・円高の反応となったのは、「米長期金利低下→日本の長期金利低下→円安」といった連想が基本だったのではないでしょうか。ただこの米長期金利上昇阻止策が成功するかについてもなお懐疑的な見方が少なくありません。

 

以上のように、8月は日米など世界的な長期金利上昇問題が現実味を増し、それに歯止めをかけることができるか、そしてそれは「歴史的円安」の転換にも影響するといったことが再認識されるところとなったわけです。

9月の注目点=日本の財政規律の維持や日米金融政策発表

「長期金利上昇=円安」は続くのか=財務省は財政規律維持を目指す

日本の財政規律への懸念を受けた「長期金利上昇=円安」はさらに広がるところとなるのか。まず長期金利上昇について、財務省はさすがに10年債利回りが3%を大きく上回ることは回避したいと考えているようです。

 

このため当初は、高市政権の消費税減税の撤回を目指していたようですが、その後高市内閣の支持率低下により、さらなる支持率低下をもたらす可能性の高い高市総理の選挙公約である消費税減税の撤回は無理になったと判断、財源の明確化により財政規律の維持を目指す方針に軌道修正した可能性がありそうです。ではそういったことで長期金利上昇に歯止めをかけることができるのでしょうか。

 

日米の金融政策発表、そして為替介入の焦点とは?

9月は中旬に日米の金融政策発表が予定されています。このうち日銀については、円安阻止の日米協調介入と足並みをそろえるといった意味でも利上げペースをこれまでより加速するとの見方が強まっており、9月の追加利上げの可能性は高そうです。ただし、すでに見てきたようにこの間米ドル/円は日米金利差縮小への反応が極端に鈍くなっていることを考えると、日銀の利上げがどれだけ円安の阻止・是正に役立つかは懐疑的ではないでしょうか。

 

FOMC(米連邦公開市場委員会)は、前回7月末の会合で一部にあった利上げ予想に対して結果的には利上げ見送りを決めたところ、それを境に株安から株高への転換が起こりました(図表6参照)。これは、株価が予想以上に米利上げを警戒していたことを感じさせるものではないでしょうか。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表6]日米の主要な株価指数の推移(2025年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

6月以降、SOX(フィラデルフィア半導体)指数が最大で3割も下落した値動きは、2000年からのITバブル崩壊のナスダック指数の下落パターンに似ているとの見方もあり、AIバブル崩壊の始まりを懸念する見方も一部にあります。そういった意味では9月FOMCの決定が株価にどう影響するか注目してみたいと思います。

9月の米ドル/円は155~163円で予想

最後に円安阻止介入について。日本の通貨当局は、160円を大きく超える円安は日本経済にとってすでに許容できないと判断していると見られることから、「この間の米ドル高・円安のピークである163円に迫るようなことがあれば介入に動く可能性が高い」(元財務官)との見方が有力です。その場合は、日銀の利上げや消費税減税に関連した財政規律の維持を目指す動きと連携する可能性が高いのではないでしょうか。

 

以上を踏まえ、9月の米ドル/円は155~163円のレンジで予想したいと思います。

9月第1週の米ドル/円は158~162円で予想

今週は、8月雇用統計など注目度の高い米経済指標発表が予定されています。雇用統計では、前回7月のNFP(非農業部門雇用者数)が予想外の減少となったものの、それを受けた米ドル売りも一時的にとどまりました。8月のNFPは前月比増加が予想されており、「NFPショック」が一時的だったかの見極めが焦点になります。

 

金融市場は例年、9月第1月曜日のレーバーデイが終わると実質的な夏休み明けで取引が本格再開します。2026年のレーバーデイは9月7日ですが、その前の今週、雇用統計発表など相場が大きく動く材料も予定されていることから、レーバーデイ明けを先取りし、一方向へ大きく動き出す可能性にも注目でしょう。

 

その場合は、「日本の長期金利上昇=円安」との見方を背景に、円安阻止介入を試す構図が基本になりそうです。以上から、今週の米ドル/円は158~162円で予想します。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

【関連記事】

■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

 

 

【注目のセミナー情報】​​​

【事業投資】9月8日(火)オンライン開催
《即時償却×想定利回り8.4%》
無人運営で手間なし!「ワーキングブース投資」の全貌

 

【国内不動産投資】9月16日(水)オンライン開催
初期費用の最大95%短期償却も!
収納ニーズの増加で注目高まる「トランクルーム投資」

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧