8月25日~8月31日の「FX投資戦略」ポイント
<ポイント>
・先週は、米財務省の米長期金利上昇阻止策発表をきっかけに、米ドル/円は158円台へ反落する場面もあった。
・今週は28日のFRB議長「ジャクソンホール発言」への注目が多いが、例年レーバーデイ明けまで小動きが続く傾向が強いことからすると、まだ大きな動きにはならない!?
・今週の米ドル/円は158~161円で予想。
先週の振り返り=米長期金利上昇阻止策を受けて米ドル反落
米財務省決定に反応、米ドル/円158円台へ反落
先週の米ドル/円はこの間の高値を更新、一時159.7円まで上昇するなど、160円の大台に接近しました。ただ週半ば以降は反落に転じました(図表1参照)。きっかけになったのは、米財務省が買い入れオペの規模を倍増すると発表、米長期金利上昇阻止策に動いたことでした。
この米財務省の発表を受けて、米長期金利は大きく低下しました。ただ、だから米ドルが大きく下落したということかと言えば、それは微妙に違うかもしれません。日米金利差(米ドル優位・円劣位)は、今回の米財務省の発表前から縮小傾向が続いていましたが、それを尻目に日米協調介入のあとは米ドル高・円安へ戻す動きとなっていたわけです(図表2参照)。
このような米ドル/円と日米金利差のかい離は最近に限ったことではなく、過去1年余り基本的に続いてきました。そういった関係を参考にすると、今回が米金利低下に伴う日米金利差縮小に反応した米ドル安・円高ということであるなら、その継続にはおのずと限界があるのではないでしょうか。
米ドル安・円高の継続は米国より日本の長期金利の動きが鍵か
日米金利差での説明が困難な最近にかけての円安傾向は、日本の長期金利上昇との連動性が強いことから、日本の財政規律への懸念を受けた円売りとの見方が多いでしょう(図表3参照)。その意味では、今回の米金利低下を受けた米ドル/円の反落が継続的になるかは、米金利低下が日本の長期金利低下をどれだけもたらすかが目安になるのではないでしょうか。
日米など先進国の長期金利は基本的に連動します。その意味では、米長期金利の低下は日本の長期金利低下をもたらす可能性があります(図表4参照)。また、ベッセント米財務長官は、米長期金利上昇は、日本の円安と長期金利上昇も大きく影響しているとの考え方と見られています。そうであれば、米長期金利上昇を止めるためには、日本にも長期金利上昇のための財政規律維持を要請する可能性はありそうです。
「歴史的円安」終了で米長期金利上昇阻止の影響も注目
客観的に見ると、米長期金利上昇の大きな要因としてイラン戦争を受けたインフレ懸念があるでしょう。その意味では、イラン戦争が終わらないなかで、米長期金利上昇を止められるかは懐疑的ではあります。
それにしても、この米長期金利上昇阻止を巡る動きは、「日本の長期金利上昇=円安」にも大きく影響する可能性がありそうです。「歴史的円安」を止められるかは、これまでは日米などの為替市場への介入姿勢、そして日本の財政規律への懸念払しょくが注目されてきましたが、それらに加えて米長期金利上昇阻止の影響も今後は注目されることになるのではないでしょうか。
今週の注目点=ウォーシュ「ジャクソンホール発言」など
「ジャクソンホール発言」で相場は動くのか!?
今週は、28日に予定されているジャクソンホール会議でのウォーシュFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言を注目するとの声が多いようです。例年この時期に予定されているFRB議長の「ジャクソンホール発言」は、相場が大きく動くきっかけになったこともありましたが、今回はどうか。
先週、7月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公表されました。このFOMCでは、一部に利上げ予想もあったものの結果的には利上げ見送りとなりましたが、議事録によるとインフレが鈍化しない場合は利上げが必要であると多くのメンバーが考えていることが確認されました。ではウォーシュ「ジャクソンホール発言」も、インフレに対して金融引き締めを支持する「タカ派」姿勢を確認することになるのでしょうか。
7月末FOMC利上げ見送り理由はAIバブル崩壊への懸念!?
私は個人的に米国株との関係に注目しています。7月末FOMC議事録では、「広範な株価指数は総じて小幅に下落」といった表現があり、株安を警戒して利上げを見送った感じはありません。ただこのFOMCまでに、米国の半導体セクターを代表する株価指数、「半導体株の体温計」とも呼ばれるSOX(フィラデルフィア半導体)指数は、1ヵ月余りで約3割の下落となっていました。これは「小幅な下落」ではなく、むしろ2000年からのITバブル崩壊のナスダック総合指数下落のプライスパターンとの類似に注目する見方もあります。
事実として言えるのは、この7月末FOMCを境に、SOX指数や他の日米の主要な株価指数も大きく反発に転じたということです(図表5参照)。これを見ると、7月末FOMCが利上げを見送ったのは、AIバブル崩壊への懸念もあったのではないでしょうか。
ITバブル崩壊でナスダック総合指数は約2年半で最大8割もの下落となりました。それを参考にすると、仮に今回AIバブル崩壊が始まっているならFRBの利上げは行われることなく、「次の一手」は利下げになるのではないでしょうか。
以上からすると、ウォーシュ「ジャクソンホール発言」が「タカ派」になった場合は株安再燃が注目され、そうでなければインフレへの警戒を確認しつつも早期利上げと受け止められることに慎重姿勢を見せる可能性に個人的には注目します。
今週の米ドル/円は158~161円で予想
金融市場は、実質的な夏期休暇明けとなる毎年9月第1月曜日のレーバーデイ明けから方向性を伴う大きな動きに向かう傾向があります。2026年のレーバーデイは9月7日で、まだそれまで間があることを考えると、今週も一方向に大きく動く可能性は低いのではないでしょうか。今週の米ドル/円も158~161円で予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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