円安阻止に奔走も、際立つ「政策のチグハグ感」…再び円安の可能性は大【今週の米ドル/円予想レンジ「158~161円」の根拠】

8月18日~8月24日の「FX投資戦略」ポイント

円安阻止に奔走も、際立つ「政策のチグハグ感」…再び円安の可能性は大【今週の米ドル/円予想レンジ「158~161円」の根拠】
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週は、約28年ぶりの日米協調円買い介入などを受け、一時163円台から155円台まで約8円も急落した米ドル/円ですが、下落幅のほぼ半分を戻すところとなりました。なぜこのような展開となったのでしょうか。マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が、先週の為替相場を振り返るとともに、今週の展開を予想します。

8月18日~8月24日の「FX投資戦略」ポイント

<ポイント>

・日米協調介入などで155円台まで円高となったものの、先週は159円まで円安に戻る展開に。消費税減税などに対する財政規律への懸念が円売り要因になっている可能性。

・ただ投機筋、日米通貨当局ともすぐに積極的に動く可能性は低そうなことから、まだしばらく大きな方向性は出ないのではないか。

・今週の米ドル/円は158~161円で予想。

先週の振り返り…協調介入受けて米ドル急落も「半値戻し」に

159円台まで円安に戻す→協調介入失敗か!?

先週の米ドル/円は一時159円半ばまで上昇しました。1998年以来、約28年ぶりの日米協調円買い介入などを受けて一時163円台から155円台まで約8円も急落した米ドル/円でしたが、そんな下落幅のほぼ半分を戻すところとなりました(図表1参照)。いったいなぜでしょうか。日米協調介入が円安阻止・是正を目指したものなら、それは失敗だったのでしょうか。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表1]米ドル/円の日足チャート(2026年4月~) 出所:マネックストレーダーFX

 

先週は、CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)など注目の米インフレ指標が発表され、それは基本的に予想通り、または予想を下回る結果となりました。これを受けて、米早期利上げ観測は後退、それに伴い日米金利差(米ドル優位・円劣位)は縮小しました。ただそれにもかかわらず、米ドル高・円安傾向が広がったわけです(図表2参照)。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表2]米ドル/円と日米金利差(2026年4月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

円安は日本の長期金利上昇と連動=消費税減税を懸念した円安?

そんな先週の米ドル高・円安を説明できそうなのは、日本の長期金利、10年債利回り上昇でした(図表3参照)。10年債利回りは大きく上昇し、2.9%に迫る動きとなりました。この主因は、高市内閣が財源の曖昧なままで消費税減税を進めることを受けた財政規律への懸念とされます。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表3]米ドル/円と日10年債利回り(2026年7月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

以上からすると、日本は米国との約28年ぶりの協調介入なども動員することで円安阻止を行う一方で、それを現内閣の消費税減税などの政策により円安へ反転させるといった具合のように見えます。円安か円高かといった意味では、政策的にはきわめてチグハグな状況が続いているということではないでしょうか。

今週の注目点…投機筋・当局、しばらくは積極的な動きなしか

投機筋に円売り本格再開の形跡見られず

一時163円まで米ドル高・円安となった動きを主導したのは投機筋の円売りでした。そんな投機筋は、協調介入を受けて円売りポジションを大きく縮小しました。代表的な投機筋であるヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り越し(米ドル買い越し)は先週にかけて2週連続で縮小し、その意味では先週にかけての159円台まで米ドル高・円安に戻した動きに関与した形跡はありませんでした(図表4参照)。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表4]米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2026年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

これには、米ドル/円が先週までヘッジファンドの円売りポジションの損益分岐点、120日MA(移動平均線)を上回るまでに至らず、含み損が続いた影響もあったのではないでしょうか(図表5参照)。そして、そもそも夏期休暇が本格化していることも考えると、まだしばらく投機筋が円売りを再燃し、160円を大きく超える米ドル高・円安を主導することも考えにくそうです。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表5]米ドル/円と120日MA(2022年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

日米当局とも追加の介入には慎重な判断となる可能性

一方、円安阻止の日米通貨当局の為替介入姿勢はどうでしょうか。まず日本の当局については、160円を超えて米ドル高・円安が進んだ場合すぐに米ドル売り・円買い介入を再開するかと言えば微妙かもしれません。すでにゴールデンウィークとこの7月末からの介入を合わせると、介入額は20兆円を超えている可能性もありそうなので、追加の介入の判断はこれまで以上に慎重になるのではないでしょうか。

 

米当局は、1998年以来の円買いでの協調介入を行いましたが、それは米ドル売りではなくユーロ売りでした。この背景には米ドル売り介入を行った場合、円以外の通貨に対しても米ドルが急落することへの警戒があったと考えられます。そうであれば、さらなる協調介入も、よほどでなければ米ドル売りではなくユーロ売りになる可能性が高いでしょう。米当局にとって自国通貨の米ドルと違いユーロの保有には自ずと限りがあることを考えると、追加の円買い協調介入もこれまで以上に慎重な判断になるのではないでしょうか。

今週の米ドル/円は158~161円で予想

今週は、それほど注目度の高い米経済指標の発表予定はありません。その上で、これまで見てきたように投機筋も、日米当局もすぐに積極的に動くとは考えにくいでしょう。以上を踏まえると、今週の米ドル/円は先週同様159円をはさんだ動意の薄い展開が続く可能性が高そうなので、予想レンジは158~161円にしたいと思います。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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