認知症の祖母が6回くれた「結婚祝い」
Aさん(27歳・会社員)は、おばあちゃん子。幼少期の記憶は、いつも祖母に遊んでもらっていたことばかりです。共働きの両親に代わり、隣の家に住んでいた祖母が保育園のお迎えから習い事の付き添いまで、子育てのサポートの多くを祖母が対応してきたのです。
祖母にとってAさんは愛おしい初孫でした。Aさんも、両親と祖父母に大切に育てられてきたことを感謝しており、社会人になって一人暮らしをするようになってからも定期的に実家と隣の祖母の家に顔を出していました。
しかし、長年自分を支えてくれた祖母も、徐々に高齢となり家族の心配が増していきます。実家に帰ると、とりわけ懸念されていたのが、「祖母が認知症になってきているのではないか」ということ。
何度も電話を掛けてきて同じことを聞いたり、遠い昔の出来事をいきなりいま起きたことのように話したり、ときにはもうとっくの昔に済んだことについて怒りだしたりと、記憶のあいまいさが目立つようになります。祖母本人が至って元気で自覚がないことも、家族が対応に頭を悩ませる要因となっていました。
そんな状況を聞いていたAさんは、なるべく時間を作って祖母に会いに行くようにしていました。Aさんから見ても「これはさすがに認知症かもしれないな」と感じる場面があり、少し寂しい気持ちにならざるを得ません。しかし、祖母はAさんへの愛情を忘れることはありませんでした。Aさんが祖母の家に行くと、それはそれは本当に嬉しそうにしていましたし、家族にも「Aに会える日が楽しみだ」と話していたそうです。
祖母とはいろいろな話をしました。仕事のことや恋愛のことも。祖母はいつも嬉しそうにニコニコして耳を傾けてくれたのです。
やがてAさんも、結婚をしたいと思える相手に出会います。彼女のことは祖母にも話していて、いつか会わせたいと思っていました。そのため、Aさんは真っ先に祖母に報告。祖母は飛び上がらんばかりに喜び、「今度お祝いを用意するね」といってくれました。
次に会いに行った際、約束どおりお祝いを用意してくれていた祖母。Aさんは心からお礼をいって、受け取りました。――ところが、その後会いに行くたびに戸惑うことが起きます。
祖母は会うたびに、結婚祝いを渡してくるのです。毎回、本当に嬉しそうに準備をしてくれているので、Aさんもどうしたらいいかわからず「もうもらったからいらないよ」と断ることもできません。Aさんはただ「ありがとう」といって受け取っていました。
結局、同様のやりとりが6回ほど繰り返されたところで、ようやく終わりました。
社会人として一人暮らしを始めてから思うように貯金ができず、結婚準備費用に悩んでいたAさん。内心、祖母のお金を有難いと思っていたのも事実です。何度も受け取ることへ心苦しさを感じつつも、受け取ってしまっていました。

