自分自身を分析し、たな卸しをしてみる
ビジネスモデルを完成させるための絶対的な条件は、自分の強みを活かすことである。この強みを活かさずして成功はあり得ない。「自分にできることは何か」を出発点とするために、自分自身を分析し、次の項目からたな卸しをしてみることだ。その際は、生まれてから今に至るまでの自分の人生を年表のように書き出してみる。具体的な項目は次のとおりである。
●今までの人生で経験したこと
●自分が持っているスキル、資格、性格
●自分が持っている人脈
●好きなこと、趣味、特技など
これらの強みをたな卸しすることで、自分自身が気づかなかった個性を認識することができる。また、これらの強みを分析し、複数の強みを連動させれば、強みを増強させることができる。これらの強みは起業していくうえで大きなアドバンテージになる。
サンエコが太陽光事業で創業する際の強みは【図表1】のとおりであるが、それを一言でいうならば、
「売ることなら絶対的な自信がある」
この強みはSONYでの営業経験がセールス、マネジメント、販売企画と多岐にわたっていた。つまり、単なる営業職ではなく、売るための販売企画から実際に営業する一連のノウハウはプロフェッショナルという認識であった。また、それを補完させるMBA理論は、マーケティングコンサルタントとして独立して、各企業に提案してきた実績から自信となっていた。
【図表1】 「サンエコの強み」の分析結果
「好きなこと」と「やりたいこと」とは別物である
SONYといえばウォークマンやハンディカムというヒット商品をイメージ すると思うが、これらのヒット商品は最初からヒットしたものではない。これらの商品は新しいライフスタイルを提案し、それを顧客に理解してもらうことで今までになかった市場を構築することができたのだ。
その体験は他に類を見ないものであるため、ドブ板営業を得意とするT君の存在は新しい市場を創造するうえで強力な武器であった。そして、二人の共通する営業活動上の価値観は「売れないものを売ろうとすることに情熱を燃やし、新たなライフスタイルを見出す」という位置づけであった。
しかも、あらゆる経営資源がゼロの状況で即断し太陽光事業に着手したわけだが、強みは「営業力」のみであった。しかし、その営業力には売るということだけではなく、その結果を出すために必要なプロセスであるマーケティング戦略、販売企画、最前線の営業力がすべて兼ね備わっていると判断したからだ。
ただし、自分の強みを分析する際に重要なのは、「好きなこと」と「やりたいこと」とは別物である点を理解することである。「好きなこと」とは経験があるからこそ好きといえる。ところが、「やりたいこと」はイメージだけの場合が多く、経験知がないものに手を出すと失敗の確率が高い。つまり、「好きなこと」 は強みであるが、「やりたいこと」は強みにならないと判断しなければならない。
起業する際は自分の強みが最大の武器となる。それが成功の近道になる。何ができるか(=強み)。これが起業する分野を選択する際の2つ目の基準である。