事業を失敗させないための「市場ニーズ」の分析方法

市場の変化を察知する「3C分析」

いくら起業家として実現したい夢が明らかでも、いくら自分の強みを活かせるビジネスアイデアであったとしても、市場が求めていなければ事業として成立しない。つまり、事業に失敗しないためにはビジネスアイデアの市場ニーズが確実に存在することが前提である。

例えば、サンエコのビジネスアイデアである太陽光発電はその商品名を聞いた際、即答で「すぐやる！」と応えていた。その要因は【図表1】の市場の変化を察知する3C分析をすぐ考え、今までの営業経験の勘を働かせた判断だった。つまり、市場ニーズは確実に存在すると判断したわけだ。

また、当時の太陽光発電は普及率が限りなくゼロに近い状況であったが、将来的には普及拡大していく期待できる市場性があると推測した。そのうえで、市場が成長する前に販売ノウハウを構築することは勝ち組になれる可能性がある。そして、販売ノウハウを構築した際は先行者利益を獲得できる。それらは、マーケティング理論のフレームワークであるSWOT分析と商品のライフサイクルで分析できる【図表2】。

SWOT分析（※1）の結果は「市場の機会」において、太陽光の普及率が1％にも満たないが、CO2削減の環境問題はグローバル化し、補助金等の国家政策や売電価格は市場の追い風になる。また、訪販会社が乱立し、明確なトップ企業が存在しないことはビジネスチャンスである。

「市場の脅威」は市場が拡大してくると大企業や量販店が参入してくるため、競争が激化する。逆に、太陽光の価値が市場に浸透していないため、想定するスピードで市場が拡大するかどうかは不透明であることがリスクである。

【図表1】 市場の変化を察知する能力

【図表2】 2009年7月作成:サンエコ北海道のSWOT分析

挑戦に値する市場環境であると判断した根拠とは？

「サンエコの強み」は前項で書いたとおり、営業系オンリーの強みであるが、絶対的な強みと認識し、逆に弱みは知識や資金、顧客等の経営資源はゼロに近いとの分析である。

商品のライフサイクル（※2）に当てはめると、「導入期「成長期」「成熟期」「衰退期」のうち、「導入期」に位置する。また、商品ライフサイクルの成長期以降に参入するには相当の差別化となる武器を持ち合わせていないと勝つ確率が低い。その点では太陽光事業はサンエコのような経営資源が限りなくゼロに近い企業でも、売ることは絶対的な自信があるという強みだけで挑戦に値する市場環境である判断した。

その裏づけとして、これらの分析から、サンエコの太陽光事業を展開する本質の目的は事業上の最大の資源である「顧客の獲得」であった。そして、将来的には太陽光の普及拡大が進んでいくと競合企業が参入し市場が激化するため、その際は新しい事業領域で戦うことを考えた。

そのために顧客を獲得しておくことが安定経営につながる。したがって、太陽光事業はビジネスアイデアの段階において市場が大きくなることを想定し、先手を打って参入すべき市場であると考えた。

事業に失敗しないためには、ビジネスアイデアとなる起業計画期において、まず自己実現したい目的を明らかにし、そのために自分の強みを活用することである。そして、市場のニーズを捉えた商品やサービスを探し出し、その事業のSWOT分析や商品のライフサイクルから市場が求めているビジネスを客観視することが重要である。

【図表3】 市場のチャンスを活かす提案型営業へスキルアップ

（※１） SWOT分析（ぶんせき、SWOT analysis）とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおいて、外部環境や内部環境を強み （Strengths）、弱み（Weaknesses）、機会（Opportunities）、脅威（Threats）の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法の一つである。

（※2）商品ライフサイクル（Product life cycle）とはマーケティング用語の1つで、商品が市場に登場してから退場するまでの間を指し、普通は各商品に対してこの間の売上と利益の変化に着目して、最適のマーケティング戦略を構築するための基本的な情報となる。