「何のために起業したいか」を真剣に考える
起業する際に大切なのは、明確な目的や目標を具体化していることである。その具体化したものを実現するために起業するわけだ。ところが、この目的や目標を具体的にしていたとしても、起業後10年間で生き残る企業は20社中1社に過ぎない。それくらいに起業はハードルが高いという結果だが、逆に言うならば立案したプランが甘かったという結果は枚挙にいとまがない。
そこで、「何のために起業したいか」を真剣に考えることである。そして、起業という高いチャレンジに失敗しないためにはさらに、「自分の人生という限られた時間を使って何を実現したいのか」という質問を自分自身に問いかけ、具体化することである。
例えば、私はSONYを退職し、ビジネススクールに入学したが、その際の受験科目に面接があった。その面接では入学後の目的と修了後のあるべき姿をプレゼンする課題があった。(図表1)はそのときの資料の一部である。
私がビジネススクールに入学したいと考えた目的は、SONYでのマーケティング及び営業の実践とビジネススクールで習得する経営理論を融合させて真のビジネスマンとしてのスキルを構築することであった。また、MBA取得後は、そのスキルを活用して次世代の営業マンや企業の活性化のサポートをおこない、北海道の経済に貢献することが第二の人生における自己実現と考えた。
【図表1】
「実現の形」を人にプレゼンできるか?
私が起業したいと思いついた願望は「マズローの欲求5段階」(図表2)に適合する。50歳という年齢と定年までの時間、そして組織人で培ったスキルやキャリアを考えたときに、今までの培ったものを活かした新しい事業を実現したいと考えたのだ。
そのためには、現在のスキルだけでは事業として成功するとは思われなかったため、営業やマーケティングの経験を活かすうえでビジネススクールに入学し、経営理論を学んだ。それは自己実現の欲求を達成するための具現化だった。
このプレゼン資料は2年間無職でMBA理論を習得するためのモチベーションを維持させ、死に物狂いで勉強したことが今の事業に生きている。これをOFFICE KOMの経営理念として起業した。
このように、ビジネスアイデアを具体化するためには「起業家として何を実現したいのか」を考えることである。
また、その実現の形を資料にまとめ、客観的に指摘してくれる人にプレゼンすることで実現したいものがより具体的になる。加えて、自分自身の意思を再確認できる機会にもなる。そのためにも「人生で何を実現したいのか」そして「起業する目的は何か」を具体化することである。この考え方が起業家の理念となり、起業する分野を決定していく際の一つの基準となる。
【図表2】