ネットワークを活かして正確な情報を集められるか?
起業家にとって、ビジネスプランの完成度が事業に失敗しないための基礎となるものであるため、いかに完成度を高めていくかが鍵を握る。だから、当然のことであるが、「手抜き」とか「まっ、いいかー」という安易な考え方はあってはならない。そのうえで、あらゆるネットワークを活かして正確な情報を集められるだけ集める努力をすることである。
サンエコの太陽光事業は、知識や経験がまったくない中で参入し、ライフサイクルは未開発な市場導入期であり、市場性は認知度が低く、加えて超高額な商品であった。この状況はあらゆるビジネスアイデアがある中でもかなりハードルが高い挑戦であった。
そして、その結果として生き残ることができたわけだが、その最大の要素はビジネスプランの完成度である。そのため、その完成度を求めるために準備期間を1年に設定し、まずは合宿によってプランを固めていくための問題点を洗い出した。
さらには、問題点をクリアしていくために正確な情報を収集することに徹した。正確な情報は専門家に聞くことが最適なため、メーカに勉強会を何度も実施してもらい、その際の商品知識以外の市場環境や競合となる他社の動向まで聞き出すことができこの勉強会の主たる目的は、モノづくりの完成度を高めることだった。その理由は前回のとおり、ベネフィットサービスが商品のコアとなり、それを商品の形態や付随機能が補完することで完成されていくからである。しかも、太陽光の場合は顧客の屋根の形状によってそれぞれに受注生産となるため、メーカー勉強会を通じて徹底的にヒアリングしながら慎重に組み立てていった。
【図表】 商品づくりの構造
重要となる「教えてもらうという謙虚な意識」
このように、プランを立案するためには正確な情報が欠かせない。ところが、サンエコとは相反してビジネスアイデアが実務経験に基づくものだとしたら、起業家は自らの経験でプランを立案することになる。すると、そのプランは絶対的な位置づけになり、硬直化したものになる場合がある。これは非常に危険な考え方である。
その理由は、実務経験が組織上の一人だったとしたら、起業家と組織人という立場が違うためにプランづくりも変わってくるからだ。それを理解したうえでプランを立案するには実務経験を客観視できるところで情報を収集し、実務経験の反面教師となって情報を精査したうえでプランを作っていくと完成度が高くなる。そのために、「教えてもらうという謙虚な意識」が重要であり、その謙虚さによって、冷静に情報を収集し、分析し、そしてプランに活かすことができる。
その意識は教えてくれる側も喜びとなり、あらゆる面で協力してくれる関係性を構築することができる。起業家の謙虚な意識が新しい人的ネットワークを創る力になり、そのネットワークからの情報が事業に活かされていく。