純資産価額方式にも問題がある
見直しの対象は、類似業種比準方式に限らない。
純資産価額方式は、継続企業の株式を評価する際にも、会社の資産・負債を基礎とした評価となるため、継続企業の収益力を十分に反映できないのではないか、という指摘がある。
一方で、純資産価額方式には、会社の財産価値を反映するという意味では明確な合理性が存在する。そこで、時価純資産に営業権をどのように反映させるかなど、新たな評価方法を検討すべきだとの意見も挙がっている。
配当還元方式も見直しの対象に
一定の還元率を用いて評価する配当還元方式についても、還元率や計算方法、対象株主の範囲などの見直しが論点となっている。
また、従業員持株会などについて、配当還元方式の見直しによって実務上の支障が生じる可能性も指摘されている。
こうして見ると、今回の議論は、類似業種比準方式の計算式を小幅に修正する程度では収まらないことがわかる。類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式という現行の評価体系そのものをどう組み替えるのか――そこまで踏み込んだ議論が必要不可欠となる。
「安すぎる」という問題に、国税庁はどう答えるのか
1990年の国会でも、類似業種比準方式による評価額が実態より安すぎるのではないか、という指摘がなされていた。今回の見直しは、その積み残されてきた問題への回答が問われる局面にある。
非上場株式を上場会社の株価などから機械的に評価すれば、企業の実態から大きく乖離する場合がある一方、評価額を引き上げれば、中小企業の事業承継を長年にわたって支えてきた仕組みに大きな影響が出る。
国税庁自身も、これまでの類似業種比準方式が、中小企業の円滑な事業承継への配慮という観点から改正されてきたことを踏まえ議論を進めている。また、日本商工会議所も、制度変更による負担増について、十分なシミュレーションが必要だと指摘している。
今回問われるべきは、類似業種比準方式の存続・廃止ではない。企業価値をいかに測るのか、そして事業承継を税制でどう支えるのか――この二つを切り分けて考えられるかどうかが、今回の議論の要諦なのである。

