(※写真はイメージです/PIXTA)

国税庁が有識者会議で示した株価圧縮スキームは、非上場株式の評価が「安すぎる」という36年来の問題を、単なる計算式の修正では済まない論点にまで押し広げた。類似業種比準方式を残すか/廃止するかという二択ではなく、企業価値の評価と事業承継への政策的支援をどう切り分けるか――ドイツの制度や日本の小規模宅地等の特例を手がかりに、見直しの方向性とオーナー経営者が今後注視すべきポイントを整理する。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

日本にも「評価」と「政策目的」を分離した前例がある

実は日本にも、評価上の配慮を税制上の特例へ移した前例がある。それが小規模宅地等の特例だ。

 

この制度は、もともと昭和50年付の個別通達(旧直資5-17)によって運用され、遺族の生活基盤維持や地価高騰への対応などの政策目的から、事業用・居住用宅地について、通常の評価額より低い価額で評価する取り扱いが行われていた。

 

その後、昭和58年度の税制改正で租税特別措置法上の特例として法定化され、日本にも、評価上の配慮を通達による運用から租税特別措置法上の明確な特例へ移した前例がある。

 

この考え方を非上場株式に当てはめれば、会社の価値はできるだけ適正に評価しつつ、事業承継については、別途税制上の優遇措置を設けるという制度設計も見えてくるだろう。

企業価値評価をDCF法に一本化できるのか

では、類似業種比準方式を廃止し、DCF法などの収益力を重視した評価に置き換えれば問題は解決するのか。話はそう単純ではない。

 

DCF法とは、将来のキャッシュフローや割引率などを前提に企業価値を算定する手法である。上場企業やM&Aなどでは有力な評価手法だが、相続税評価のため非上場の中小企業に対しても一律に採用するとなると、将来予測や割引率の設定などの点で評価者による差が生じる可能性がある。

 

実際、有識者会議でも、インカムアプローチを重視すべきとの意見がある一方、中小企業の株式評価にDCF法を用いることへの慎重論も挙がっている。将来収益や資本コストの算定は評価者によって差が生じやすく、客観性や検証可能性をどう確保するかが課題として指摘されている。

 

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