売買、交換、無償の贈与…所得税法上の「譲渡」にあたる行為
では、次に「譲渡」とは何を指すのでしょうか。この点については、「有償無償を問わず資産を移転させるいっさいの行為」を指すと考えられています(最高裁昭和50年5月27日)。無償でも譲り渡す行為にあたる、ということです。
ここにいう「譲渡」にあたると考えられているものは、以下のとおりです。
「売買」:対価を得て有償で他人に財産を移転させること
「交換」:他人がもつ財産と自分がもつ財産をそれぞれ移転させて交換すること
「贈与」:無償で財産を他人に移転させること(タダであげること)
「代物弁済(だいぶつべんさい)」:債務の返済をお金ではなく別の物で代わりに行うこと
「物納」:金銭ではなく土地・建物などの物で納税すること
このほか、自らの意思によらない「公売」や「強制収用」も「譲渡」にあたると考えられています(ただし「非課税所得」になるものもあります。この点はあとでお話しします)。
「現金」は非課税、「マイホーム」は課税対象…離婚する夫婦の財産分与にかかる税金ルール
最高裁判所は「離婚による財産分与」についても、夫が自己所有の不動産(土地・建物)を分与した場合、その分与をした者にとっては「資産」を「譲渡」したことにあたると判示しています(前掲最高裁昭和50年5月27日判決)。
たとえば、夫婦が離婚して、夫が妻に自己所有の不動産を財産分与として渡した場合、これも「資産の譲渡」にあたります。その不動産の時価が1億円で、取得したときの時価が3000万円だったら、その差額の7000万円(値上がり益)に対して、課税されることになるのです。
この場合の課税は、財産分与をした人(分与者。この場合は「夫」)にとっては、財産分与をすべき義務(分与義務)が消滅したという意味での「経済的利益」を得たからだと説明されています。
課税されるには「収入」が必要になりますが(所得税法36条1項)、財産分与は有償の譲渡ととらえ、分与時の不動産の時価を「収入」と考えるのです。
これに対して、財産分与により不動産を取得した側は、それが相当なものである限り贈与税は課されないとされています。同判決は、分与義務の消滅という「経済的利益」があると判示しているため、財産分与が有償譲渡にあたることを前提にしていると考えられます。そうすると、適正な財産分与である限り、それは無償(タダ)といえず、「贈与」にはならないことになるからです。
なお、「離婚による財産分与」のうち、金銭を分与した(支払った)場合は「譲渡所得」にあたりません。先にお話ししたように、「現金」は譲渡所得を発生させる「資産」には該当しないと考えられているからです。
木山 泰嗣
青山学院大学法学部教授(税法)/同大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻主任
鳥飼総合法律事務所客員弁護士
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
【注目のセミナー情報】
【決算対策 】9月25日(金)オンライン開催
「GPUサーバー」はただの設備ではない?
税制優遇を活用する「戦略的資産」としての役割
【事業投資】9月30日(水)オンライン開催
年商1,600万円・年間利益600万円のモデルケースを公開!
信頼のECCブランド「個別指導塾ベストワン」の経営戦略


