「月3万円くらいなら」息子の申し出に甘えてきた10年間
75歳の信一さん(仮名)は、73歳の妻・和子さん(仮名)と、郊外の一戸建てで暮らしています。
夫婦の年金収入は合わせて月約17万円。住宅ローンは完済していますが、現役時代の収入はそれほど多くなく、退職時の貯蓄も約700万円でした。
2人の生活を支えてきたのが、48歳の長男・直人さん(仮名)からの仕送りです。直人さんが援助を始めたのは、信一さんが65歳で仕事を辞めた頃でした。
「年金だけだと少し厳しいでしょう。月3万円くらいなら送れるから、生活費の足しにしてよ」
当時、直人さんは会社員として働いており、結婚して間もない時期でした。信一さん夫婦は遠慮しましたが、息子の厚意に甘えることにしたそうです。
「毎月3万円も送ってもらうのは申し訳ないと思いました。でも、息子が『無理のない範囲だから』と言ってくれたので」
仕送りは毎月欠かさず振り込まれ、気づけば10年が経過していました。
夫婦の生活費は月約19万円。年金17万円に仕送り3万円を加えれば、税金や社会保険料の支払いを含めても、毎月の家計はおおむね収まっていたといいます。
「贅沢をしていたわけではありません。食費や光熱費を払って、たまに外食するくらいです。息子からのお金があることで、安心して暮らせていました」
そんなある日、直人さんから電話がかかってきました。
「お父さん、ちょっと相談があるんだけど」
直人さんは、これまで続けてきた仕送りを、翌月からやめたいと切り出したのです。
「子どもの教育費が思っていた以上にかかっていて、住宅ローンもあるから、うちも余裕がなくなってきたんだ。申し訳ないけど、仕送りはやめるから」
直人さんには高校生と中学生の子どもがいます。上の子は大学進学を希望しており、今後の学費に備える必要があるとのことでした。
信一さんは「わかった。今までありがとう」と答えたものの、電話を切ったあと、しばらく考え込んでしまったそうです。
「息子も家族を養っているんですから、仕方がないですよね。ただ、毎月入ってくるものだと思っていたので、急に不安になりました」
和子さんも「10年間も助けてもらったんだから、これからは私たちで何とかしないとね」と話しました。
しかし、月3万円の仕送りがなくなると、夫婦の家計は毎月約2万円の赤字になる計算です。
