ピストルを突きつけてロレックスを奪った強盗犯も、税務署で「確定申告」の手続きをしなければいけないワケ

ピストルを突きつけてロレックスを奪った強盗犯も、税務署で「確定申告」の手続きをしなければいけないワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

所得税法では、給与所得などのほか、競馬の払戻金や保険金の満期返戻金などの一時的な所得にも「所得税」がかかります。では、犯罪者が強盗や横領などで不当に得た「違法な所得」には、税金はかかるのでしょうか。『[新版]分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社)より、税法が専門の青山学院大学教授の木山泰嗣氏が具体例を挙げながら、所得税法のしくみをわかりやすく紐解きます。

盗んだ現金も、強盗したロレックスも…犯罪で得た利益も「所得」にあたる

「包括的所得概念(※)」からすれば、犯罪によって得た利得も「所得」にあたります。

※手元に新しく入ってきた経済的価値であれば、得た理由や原因を問わず、すべて「所得」として課税対象にする所得税法の基本原則

 

泥棒が盗んできた現金80万円でもいいですし、強盗がピストルを突きつけて高級時計店から奪い取った時価(合計)5000万円相当のロレックスでもかまいません。従業員が会社から横領した300万円も同じです。

 

犯罪レベルまでいかなくても、法律で禁止されているもの(たとえば、利息制限法で禁止されている利息の支払いを受けた場合のその制限を超えた部分など)でも同じです。

 

これらは原則として、すべて所得税法の課税対象になる「所得」にあたります。それは「包括的所得概念」の意義に戻れば明らかです。理由や原因を問わず、あらたな経済的価値の流入が「所得」になるのですから、それが「違法な所得」だとしても「所得」にあたるのです。

 

こういう話をすると「泥棒や強盗や横領した人が、犯罪で得た現金を『確定申告書』に記載して税務署に申告するわけないじゃないですか」という、つっこみが入るかもしれません。それは、実際には「しない」というだけです。

 

本来は「しなければいけない」ものなのです。これらの犯罪者は、さきほど挙げた額の「収入」を得ているからです。

 

最高裁が示した“違法な所得”への課税

犯罪にどんな経費がかかるか(それを経費として控除してよいか)は別として、これらの収入があれば、所得税法が定めている「所得」があります。こうして、「違法な所得」であっても、その利得を得た納税者は、所得税を納めるべき義務を法律上、負うことになります。

 

最高裁判所も、「制限超過部分をも含めて、現実に収受された約定の利息・損害金の全部が貸主の所得として課税の対象となるものというべきである」として、利息制限法に違反して支払いを受けた利息(超過利息)が「所得」として課税対象になることを判示しています(最高裁昭和46年11月9日第三小法廷判決・民集25巻8号1120頁)。

 

つまり、違法な所得であっても「所得」になる、ということです。ちなみに法律ではありませんが、課税実務の取扱いを定めた所得税基本通達にも、「その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない」と規定されています(所得税基本通達36―1)。

 

次ページ違法なお金にも「所得税」がかかる

※本連載は、木山 泰嗣氏の著書『[新版]分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

[新版]分かりやすい「所得税法」の授業

[新版]分かりやすい「所得税法」の授業

木山 泰嗣

光文社

泥棒が盗んだ現金も「所得」になる!? 宝くじの当せん金と競馬の配当金、どっちに税金がかかる? 通勤手当はいくらまでなら課税されない? 一度税金をとられても、とり返す方法が!?……etc. 身近な給与所得や源泉徴収をはじ…

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