会社負担の〈社員旅行費〉が例外的に「非課税」として扱われる条件
フリンジ・ベネフィットの一つに社員旅行の費用があります。
過去には、これに対する課税の是非をめぐって裁判で争われたこともありました。その一例が「ハワイ5泊6日事件」と「香港2泊3日事件」の2つのケースです(岡山地裁昭和54年7月18日判決・行集30巻7号1315頁、大阪高裁昭和63年3月31日判決・訟務月報34巻10号2096頁)。
ここで問題になったのは、使用者(会社)が負担したレクリエーション費用です。社員旅行で、ハワイに行く、香港に行く。そうしたときに、会社が負担した費用は、従業員にとって「あらたな経済的価値」になりますから「所得」にあたるはずですし、勤務関係に基づき支給されるものなので「給与所得」になるはずです。
しかし、社員旅行というのは、勤めている人にとって、強制的要素があります。家族だけで、恋人と、あるいは仲のいい友だちと行く旅行とは意味が違います。それにもかかわらず、課税するのはどうなのか――こういう問題が起きたのです。
裁判所は、いずれの事件においても、レクリエーション費用が「給与所得」にあたることを前提にしつつ、通達の規定が「レクリエーション行事が社会通念上一般的に行われているものと認められる場合には、例外的に課税しなくて差し支えない」としている点もふまえながら、具体的な判断を示しました。
一人あたり3万円弱の香港は「一般的な社員旅行」として非課税に
「香港2泊3日事件」の判決を引用します(前掲大阪高裁昭和63年3月31日判決)。
(下線・傍点は筆者が記載)
このあと裁判所は、この「課税しなくて差支えない」と規定している通達について、(1)雇用契約上、事実上は参加に強制的な面があること、(2)与えられた経済的利益を自由に処分できるわけでもないこと、(3)レクリエーション参加で従業員が受ける経済的利益は少額であるのが通常であること、(4)その評価も困難なことが多いこと、(5)一般的に行われているレクリエーション行事に課税するのは国民感情からも妥当ではないことなどを理由に、「合理性」があると判示しました。
そのうえで、「旅行が本件通達にいう社会通念上一般的に行われていると認められるレクリエーション行事にあたるか否か」について、「旅行の企画立案者・主催者、旅行の目的・規模・行程・従業員の参加割合、第一審原告(使用者)及び参加従業員の負担額、両者の負担割合等を総合的に考慮すべきである」といった判断基準を示しました。
結論としては、「香港2泊3日事件」の場合、一人あたり3万円弱のレクリエーション費用は「給与所得」として課税しないという判断がされました。
一人あたり18万6500円のハワイは「豪華すぎる」として課税対象に
これに対して、「ハワイ5泊6日事件」はどういう判断がなされたのでしょうか。こちらは会社の費用負担が従業員一人あたり18万6500円で、これは「給与所得」として課税されるという判断がされました。
「本件ハワイ旅行について、前記のような日程、費用等を考えると、それが企業の福利厚生事業たる慰安旅行として、社会通念上一般的に行なわれている性質・程度のものとは到底認めることができない」という理由からでした(前掲岡山地裁昭和54年7月18日判決)。
木山 泰嗣
青山学院大学法学部教授(税法)/同大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻主任
鳥飼総合法律事務所客員弁護士
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