(※写真はイメージです/PIXTA)

退職後、「元気なうちにやりたいことを楽しみたい」と考える人は少なくありません。十分な貯蓄があれば、現役時代には難しかった旅行を楽しむこともできます。ただ、老後資金は旅行だけに使うものではありません。日々の生活費や住まいの修繕などが重なると、想像以上の速さで資産が減ることもあります。


旅行費だけではなかった、1年間で減った「700万円」

旅行に約400万円。

 

それ以外にも、前年にはエアコン2台を交換し、給湯器も故障したため買い替えていました。さらに築30年を超えた自宅では外壁と屋根の補修が必要になり、約180万円を支払っています。

 

家電の買い替えや冠婚葬祭なども重なり、1年間に金融資産から出ていった金額は合計で700万円近くになっていました。

 

もちろん、そのすべてが浪費だったわけではありません。家の修繕はいずれ必要になるもので、旅行も夫婦が長年楽しみにしていたものです。

 

しかし浩一さんが青ざめたのは、その金額を年間単位で考えたことがなかったからでした。「5,000万円」という総額だけを見て、一つひとつの支出を「これくらいなら大丈夫」と判断していたのです。

 

総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月の実収入は25万4,395円、可処分所得は22万1,544円なのに対し、消費支出は26万3,979円でした。平均では、日常の消費支出だけでも可処分所得を月約4万2,000円上回っています。

 

さらに、総務省『2025年(令和7年)平均消費者物価指数』では、総合指数が前年比3.2%上昇しています。物価が上がれば、同じ生活を続けていても支出額は増えやすくなります。

 

「このペースで毎年700万円使ったら、7年くらいでなくなるじゃないか」

 

浩一さんが言うと、典子さんは、「毎年屋根を直すわけじゃないでしょう。でも、今度は病気や介護にお金がかかるかもしれないよ」と答えました。

 

そこで夫婦は、旅行をやめるのではなく、今後使える金額を整理することにしました。

 

年金で賄える毎月の生活費と、貯蓄から補う金額を確認。住宅設備の交換や医療・介護など、将来まとまって必要になる可能性がある資金は旅行費とは分けて考えることにしました。

 

翌年の海外旅行は1回に減らし、航空券やホテルについても「せっかくの老後だから」と無条件に上位のものを選ぶのではなく、満足度とのバランスを考えるようになりました。

 

「旅行したことを後悔しているわけじゃないんです。むしろ行ってよかった。ただ、5,000万円という数字を見て、何でもできるような気になっていました」

 

老後資金がいくらあれば十分なのかは、年金額や住居、家族構成、生活水準によって異なります。貯蓄額が大きくても、そこから年間いくら取り崩しているのかを把握しなければ、資産がどの程度持つのかは見えてきません。

 

旅行などを楽しむためのお金と、日常生活や住まい、将来の医療・介護などに備えるお金。老後だからこそ資産を使うことも大切ですが、総額だけで安心せず、何にいくら使えるのかを整理しておくことが、長く楽しみを続けることにもつながります。

 

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