日本の物価高、インドIT人材の就職に影
日本の物価上昇が続く中、海外や日本での就職を検討しているインドの工科系学生にも不安が広がり始めている。食料品などの価格上昇が生活費を圧迫しているほか、エネルギー価格の上昇に加え、渡航や帰省に必要な航空運賃の高騰も、移動の大きな負担になっているためだ。
日銀は7月のレポートで、国内の物の価格に「当面、上昇圧力がかかり続ける」と分析した。デフレが続いていた日本で物価高が定着しつつある状況は、将来の就職先として日本を視野に入れる彼らににとっても大きな不安要素となっている。
「物価高を懸念」は6割超、「送金少なくなる」不安も
日本の物価高への懸念を明確に示したのが、Zenkenが2026年4月に実施した調査だ。同社はインドの工科系大学3~4年生に対し、日本や海外での就職についてどんな意識を持っているのか調査を行い、1,348人から回答を得た。
調査で「日本の物価が上がっていることについて不安はあるか」と尋ねたところ、61.1%(過半数)が「はい」と回答した。日本では1990年ごろのバブル崩壊後、デフレが続き、欧米諸国に比べて物価が安くなっていた。しかし、2021年以降は円安や資源高の影響で、物価の上昇傾向が続いている。
日本の物価高に不安があると答えた学生に理由を聞いたところ(複数回答)、最も多かったのは、渡航や一時帰省の負担を懸念する「インドからの引っ越しや帰省など移動の費用が増加するため」(75.3%)だった。航空運賃の値上がりにより、採用されても故郷へ帰りづらくなることを不安視しているとみられる。
続いて多かったのは、就職後の現地暮らしを見越した「日本での生活費が増えて暮らしにくくなるため」(63.5%)という回答だ。さらに「自国の家族への送金が減ってしまうため」(38.5%)、「欧米より物価が安いから日本で働きたいと思っていたため」(23.2%)と、他国と比較した際のメリットが薄れることを心配する声が続いた。
経済財政白書「原油高がGDPデフレーター押し上げも」
26年度版の「経済財政白書」は、国内物価について「企業の価格転嫁の進展とともに、期待物価上昇率は上昇傾向になっており、中東情勢を受けた原油価格等の上昇がもう一段の押上げ要因となっている」と指摘する。今後の物価動向については「原油価格の上昇が国内消費や設備投資といった最終財価格に徐々に転嫁されることを通じて、中長期的にGDPデフレーター(GDPでみたインフレ率)を押し上げる方向に働く可能性も考えられる」としている。
内閣府が7月に実施した「消費動向調査」でも、日頃よく購入するものの1年後の価格が上昇すると見込む割合は9割を超えた。中東情勢が緊迫した3~4月に比べれば消費者マインドは回復しつつあるものの、なお予断を許さない状況だ。日本の比較的高いインフレ率が短期間で収束する可能性は低く、物価上昇がさらに加速すれば、日本企業によるインドIT人材の獲得にも影響を与える可能性がある。
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