「少しなら出してあげるよ」孫の大学進学に振り込んだ50万円
洋子さん(仮名・70歳)は、年金月約15万円、預貯金約1,600万円で一人暮らしをしています。娘の香織さん(仮名・46歳)には2人の子どもがおり、この春、上の娘である美咲さん(仮名・18歳)が私立大学に進学しました。
合格の知らせを受けたとき、洋子さんは自分のことのように喜びました。
「よかったね。頑張ったものね」
電話で美咲さん本人とも話し、「大学に入ったら何を勉強するの?」などとしばらく話したそうです。
数日後、香織さんとの電話で入学準備の話になりました。入学金や授業料に加え、パソコンやスーツなども必要になり、「春は本当にお金がかかるね」と娘がこぼします。
文部科学省『令和7年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金等』によると、私立大学の文・教育系では、授業料、入学料、施設設備費の合計は平均約122万円です。
そこで洋子さんは、「少しなら、おばあちゃんが出してあげるよ」と申し出ました。
香織さんは最初、「そんなにいいよ」と遠慮しましたが、洋子さんは「美咲のために使うなら」と50万円を振り込むことにしました。決して気軽に出せる金額ではありません。
洋子さんの年金は月15万円。住宅ローンのない自宅マンションで暮らしているとはいえ、固定資産税や管理費、家電の買い替えなどもあります。
それでも、「貯金はこういうときに使うもの」と考えました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、60歳以上の25.2%が子や孫の生活費を「ほとんど」または「一部」負担しています。70~74歳に限っても22.9%でした。
振り込みを終えた日の夜、香織さんから「確認したよ。本当にありがとう」と電話がありました。洋子さんは「美咲にも頑張ってって伝えて」と答えました。
そして、孫からの電話を待ちました。翌日も、その翌日も電話はありません。
3日後、美咲さんから届いたのは、
「おばあちゃんありがとう! 大学で大切に使います!」
という短いメッセージでした。
もちろん、お礼は書かれています。それでも洋子さんは、スマートフォンの画面を見ながら、どこか寂しさを感じていました。
「金額が大きいから感謝してほしいということではないんです。でも、一度くらい電話してくれると思っていました」
