年金暮らしの親が直面する、孫へのお小遣いや金銭的支援の悩み。良かれと思った行動や無理なやりくりが、時に家族のすれ違いを生むこともあります。ある父娘の事例から、適切な金銭的距離感やコミュニケーションのあり方を考えます。
〈年金月15万円〉孫に「1万円」を包み続けた75歳父、「もうお小遣いは無理」と謝った翌日、48歳娘から届いた「怒りのLINE」の中身 ※写真はイメージです/PIXTA

毎月孫に1万円を渡してきた父

「今月から、孫のお小遣いはやめようと思う」

 

山田徹さん(仮名・75歳)がそう伝えたのは、娘の美穂さん(48歳・仮名)に電話をしたときでした。徹さんは5年前から、娘夫婦の長男である小学6年生の孫に、毎月1万円を渡していました。きっかけは、孫が小学校に入学したことです。

 

「入学祝いのつもりだったんですが、毎月渡すようになってしまいました。孫が喜ぶ顔を見るのがうれしかったんです」


金融経済教育推進機構『家計の金融行動に関する世論調査2025年(単身世帯調査)』によると、70代の金融資産保有世帯における資産額の平均値は1,877万円ですが、より実態に近い中央値は900万円となっています。徹さんの貯蓄額880万円は、この中央値とほぼ同水準です。

 

また、同調査で70代に金融資産の保有目的(複数回答)を尋ねたところ、「老後の生活資金」(72.2%)に次いで、「病気や不時の災害への備え」が56.9%にのぼっています。加齢に伴い医療費や予期せぬ支出への不安が強まり、手元のお金を守りたいという防衛的な心理が働くことは自然な傾向といえます。

 

徹さん自身、裕福な生活をしているわけではありません。妻には先立たれ、現在は一人暮らしです。収入は老齢年金の月15万円。年金で生活費を賄うことはできますが、収支はトントン。最近の物価高を前に、節約をしなければならないのが実情でした。

 

貯蓄は約880万円。大きな借金はありません。ただ、75歳になり、「これから何にお金がかかるか分からない」という不安が強くなっていました。特に気になっていたのが医療費です。月によっては通院費や薬代で1万円を超えます。エアコンが壊れれば、修理費だけで数万円かかるかもしれません。

 

それでも毎月1万円、年間12万円、5年間で60万円になります。

 

「正直、少しきつかったです。でも、孫に渡すお金まで惜しむようになったら、自分が情けない気がして……」

 

そんな徹さんの考えが変わったのは、今年に入ってからでした。冷蔵庫の買い替えで約9万円。さらに、歯の治療でまとまった出費もありました。通帳の残高を見て、徹さんはようやく決断しました。

 

「もう、お小遣いは無理だ」

 

電話の最後に、徹さんは「ごめんな」と付け加えました。