日本発の研究が世界の常識を書き換えた理由
これまで海外では、「ロボットは雇用を減らす」という研究結果も数多く報告されてきました。特に有名なのが、MITのダロン・アセモグル教授らによる研究です。この研究では、ロボット普及によって地域雇用が減少した可能性が指摘されました。
しかし、今回の日本研究には大きな違いがあります。それは、企業単位で非常に詳細なデータを分析している点です。
研究では、独自のアンケート調査によって、各企業が「何台ロボットを導入したのか」「いくらの価値で取得したのか」まで細かく追跡し、東京商工リサーチが保有する各企業の売上・雇用データと接続して分析しています。
さらに重要なのが、「因果関係」を分析している点です。単に「儲かっている企業がロボットを導入した」のか、それとも「ロボット導入によって儲かるようになった」のかを区別する必要があります。
研究者たちは、この問題を解決するために、生産性向上設備投資促進税制(TC-PPEI)の対象範囲や特別償却率が企業規模・時期によって制度改正のたびに変化してきたことに着目しました。この税制上の変動は個々の企業の業績とは無関係に生じるため、「税制優遇によって外生的にロボット導入が後押しされた企業」の変化を自然実験のように分析することで、ロボット導入と業績の因果関係を識別したのです。
その結果、「ロボット導入が売上と雇用を直接押し上げた」という因果関係が強く示されました。また、ロボット導入後も生産現場の労働者数が減少したという証拠は見られず、Acemoglu, Lelarge and Restrepo (2020)によるフランスの分析などとは対照的な結果となりました。企業へのヒアリングでは、ロボット導入を検討する企業の多くが、ロボットに任せる業務から人にしかできない業務へと労働者を再配置する計画を立てていたことも分かっています。
これは、世界的にも非常に価値の高い研究成果だと言えます。
AI・ロボット時代に私たちはどう働くべきか?
今回の研究が私たちに教えてくれるのは、「テクノロジー=脅威」という単純な構図ではないということです。もちろん、一部の仕事は自動化されていくでしょう。
しかし、それ以上に重要なのは、人間の役割が高度化していく点です。これからの時代に求められるのは、単純作業のスキルだけではありません。
● コミュニケーション能力
● マネジメント能力
● 創造力
● データ活用能力
など、「人間らしい能力」の価値がさらに高まっていきます。
つまり、AIやロボットと競争するのではなく、それらを活用できる人材が強くなる時代へ移行しているのです。企業にとっても、単なるコスト削減だけでなく、人材育成や再配置がますます重要になります。
テクノロジーを導入するだけでは、真の成長にはつながりません。人間と機械が協力できる組織をつくることこそが、これからの競争力になるのです。
