「辞めたら暇になっちゃう」72歳でも仕事を続ける理由
「でも、もう無理して働かなくてもいいんじゃない?」
健一さんがそう言うと、洋子さんは首を振りました。
「もちろんお金はあったほうがいいよ。でも、それだけじゃないの。辞めたら暇になっちゃうでしょう」
洋子さんの仕事は午前7時半ごろから始まります。
担当する建物の共用部分などを清掃し、昼過ぎには勤務を終えます。帰りにスーパーへ寄り、午後は自宅で過ごすのが普段の生活です。
職場には同年代の人もおり、仕事が終わってから一緒に昼食を取ることもあります。
「仕事の日は朝起きる時間も決まるし、外に出るでしょう。休みの日がうれしいのも、仕事の日があるからだと思う」
とはいえ、60代のころとまったく同じ働き方を続けているわけではありません。
以前は週5日勤務することもありましたが、70歳を機に勤務日数を減らしました。体調が悪いときは無理をせず、重いものを運ぶ作業についても勤務先と相談しています。
健一さんは、それまで母について「少ない年金を貯金で補いながら暮らしている」と勝手に考えていました。実際には、洋子さんは年金だけで生活するのではなく、働ける間は給与を得て、預貯金を大きく減らさない暮らしを選んでいたのです。
「いつまで働くつもり?」
そう聞くと、洋子さんは、
「75歳くらいかな。でも、そのとき元気だったら、もう少しやるかもしれないね」
と答えました。
なお、働きながら年金を受給すること自体に問題はありません。一定の条件で老齢厚生年金の一部または全部が支給停止される在職老齢年金の仕組みがありますが、老齢基礎年金は支給停止の対象ではありません。2026年度は、厚生年金に加入して働く場合、賃金と老齢厚生年金の基本月額の合計が月65万円を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となる場合があります。
高齢期の収入は、必ずしも年金だけとは限りません。年金を受け取りながら短時間勤務を続けるなど、体力や生活に合わせて働き方を変えていく人もいます。
もちろん、健康状態や職種によって、何歳まで働けるかには大きな違いがあります。それでも、「年金をもらう年齢になったら仕事を辞める」という一つの区切りだけではなく、無理のない範囲で仕事を続けることも、現在の高齢期の暮らし方の一つになっています。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

